前年度までに、グルコース連結型ビフェニルユニットを主鎖に含有するπ共役高分子のコンホメーション変化を巧みに利用することで、同一ポリマーから「不斉識別能の異なる2種類のキラル固定相」を作製できることを報告している。平成28年度は、上述のキラル固定相の耐久性向上を目指し、「架橋部位として側鎖の一部にエチニル基を導入したpoly-Aim」を合成し、その表面修飾シリカゲル上への固定化を試み、「カラム内らせん-ランダムコイル転移に基づく不斉識別能スイッチング」について検討を行った。 アジド化表面処理を施したシリカゲル上へのpoly-Aimの固定化反応を行ったところ、シリカゲルに対して3 wt%相当のポリマーが固定化できることが分かった。得られたシリカゲルをカラムに充填後、固定化されたポリマーのコンフォメーションをランダムコイル構造に制御するために、カラム内をクロロホルムで満たし、室温で3日間静置した。このように調製した固定化型キラル固定相の光学分割能を評価したところ、ジアミド化合物(1)を光学分割可能であり、金属錯体(2)に対して明確な不斉識別能を示さないことが分かった。続いて、コンホメーション変化に伴う不斉識別能のスイッチングについて検討を行った。アセトニトリルでカラム内を処理した後、再度、光学分割能の評価を行った。その結果、1に対する不斉識別能が低下する一方、2の光学分割が可能となることが明らかとなった。以上の結果は、「シリカゲル上に固定化されたポリマーのコンホメーションが、溶媒環境の違いに応答してらせん-ランダムコイル転移可能であること」及び「汎用有機溶媒でカラム内を処理するだけで、異なる不斉識別能を有するキラル固定相二状態間のスイッチングが可能であること」を明確に示している。本カラムを再度クロロホルムで処理することで、初期状態の能力に戻せることも確認している。
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