研究課題
本研究では、放射光の高輝度X線を利用した微小角入射小角・広角X線散乱(GISAXS・GIWAXS)時間分解測定によりスピンコート成膜過程における線状ポリエステルの結晶化挙動を検討した。ポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)(Polymer Source社製, Mw = 129×103(Mw/Mn = 1.4)、Mw = 39×103(Mw/Mn = 1.3)、 Mw = 16.8×103(Mw/Mn = 1.2))を試料として用いた。約333 KでPCLの2.0、4.0および 6.0 wt%トルエン溶液を調製した。GISAXS・GIWAXS時間分解測定は、大型放射光施設SPring-8のBL45XUビームライン(理研構造生物学I)を利用して、波長0.1 nmのダイレクトX線を入射角0.11°で試料表面に照射して実施した。GISAXSおよびGIWAXSは、Pilatus 3X2M検出器(DECTRIS Ltd.)およびフラットパネル検出器(C9728-DK10、浜松フォトニクス社製)でそれぞれ検出した。スピンコート成膜初期過程では溶液による散乱の強度が急激に減少し、やがてPCLの斜方晶系結晶構造由来のブラッグ反射が異方的に出現、その強度を増大させた。散乱プロファイル解析に基づき結晶化誘導期と結晶化速度の基板回転時間、ポリマー分子量および溶液濃度の依存性をそれぞれ検討した。結晶化誘導期は短いほど核生成速度が高い。核生成速度と結晶化速度は、基板回転速度に依存して増大し、分子量と溶液濃度については最適な条件が存在することが判った。このことから、核生成速度と結晶化速度は、溶液に働く遠心力の大きさと溶液中の高分子鎖の絡み合いの程度に影響されることが実験的に明らかになった。
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日本接着学会誌
巻: 52(3) ページ: 77-82