H28年度はまず,小粒子の分散安定剤として添加するポリジメチルシロキサンマクロイニシエーター(PDM-MI)の海外代替品を用いて,小粒子内包カプセルを作製する処方の確立を行った。若干の溶剤組成に変更が必要であったが,安定に小粒子がカプセル内で分散する粒子を作製することができた。 他にも「NMRを用いたPDMの導入量」「不揮発性媒体系の検討」及び「小粒子への官能基を導入」について検討を行なった。 1.小粒子のみを取り出して測定を行うなど工夫を行ったが,定量を行うには至らなかった。 2. 防音・防振材としての応用を見据えると,カプセル内の溶媒は不揮発性が好ましいため,不揮発性媒体系の重合処方の検討を行った。それまで使用していた共溶媒であるヘキサデカン(HD)を使用したところ,小粒子内包カプセルは作製されたものの,カプセル壁が非常に薄く,モノマーのほとんどが小粒子を形成してしまった。炭素数の異なる飽和炭化水素溶媒の適用,モノマー組成を変化させ検討を行っても改善が見られなかったため,これまでの検討の知見を生かし,AGET-ATRP重合系の導入を試みた。多少の改善は見られたものの,PDM-MIを添加すると系が不安定になりやすかった。 3.小粒子への官能基導入を見据え,ジメタクリル酸エチレングリコールの単独重合系から,メタクリル酸ブチル(BMA)などとの共重合系の検討を行った。共モノマーの割合が3割程度までは,同様の形状の小粒子内包カプセルが生成した。酢酸ビニルやアジピン酸ジビニルの系では,共重合がうまく進行せずに,それぞれ単独の小粒子が生成してしまった。また,カルボキシ基の導入を目的に,カルボキシ基含有開始剤を用いた系での検討を行ったが,小粒子の凝集を促進してしまった。さらなる条件検討が必要である。
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