研究課題
両親媒性ブロック共重合体は,高分子界面活性剤や薬剤キャリアとして用いることができるため,医療材料や衛生用品の素材として幅広い分野で注目されている.古くからPluronicとして市販され,研究報告の多いPEO-PPO-PEOトリブロック共重合体に対して,PEOとPPOを交互に複数共重合したPEO-PPO交互マルチブロック(PEO-PPO AMB)共重合体の性質はあまり報告例がない.そこで本研究では,ブロック共重合体内のPEO/PPO比(fPEO)が似ているPEO-PPO AMB共重合体を用意し,水溶液中におけるミセル化挙動がとPEO-PPO-PEOトリブロック共重合体とどのように異なるかを検討した.はじめに,曇点(Tc)を見積もるために波長600 nmの光透過率測定を行った.PEO-PPO AMB共重合体のTcは,同様のfPEOをもつトリブロック共重合体のものよりもはるかに低かった.また,Tcの濃度依存性は,PEO-PPO AMB共重合体水溶液が50 °C付近に下限臨界共溶温度をもつ相分離を起こす系であることを示している.2.0 wt%のPEO-PPO AMB共重合体水溶液に対し,波長350 nmの光透過率測定を行ったところ,Tcよりも低い30 から 40 °Cにかけて,わずかながら透過率低下が見られた.このことは,Tcよりも低い温度領域でPEO-PPO AMB共重合体の会合体形成もしくはミセル化が起こっていることを示唆している.動的光散乱(DLS)測定は,温度25 °C濃度5×10-6 MのPEO-PPO AMB共重合体水溶液には,10 nm程度の流体力学半径をもつユニマーと200 nm程度の会合体が存在することを示した.疎水蛍光プローブ(FP)法の測定から,同条件下では会合体・ユニマーともに疎水コアをもたないことがわかった.
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