研究課題
架橋高分子は、制震材、弾性材料、吸水材料、生医学材料、電子材料、塗料、接着剤など幅広い用途に用いられており、われわれの生活に必要不可欠な材料である。この架橋高分子は、化学架橋からなる網目構造を有しており、この構造に由来して、様々な物性を示す。代表的な物性の制御因子としては、1. 架橋点間の分子鎖の分子運動性(ゴム状態かガラス状態かなど)、2. ダングリング鎖(ぶら下がり鎖)の導入、3. 架橋点間分子量(架橋密度)の変化 などが挙げられる。しかしながら、実際は、架橋高分子の網目構造には特有の不均一性が存在しており、このことが物性制御の妨げになる。この網目構造の不均一性について、これまで散乱技術により評価されているものの、直接観察された例は皆無である。学術的な真理の究明の観点に加えて、実用的な観点からも、架橋高分子の網目構造の不均一性の可視化は極めて重要である。本研究では、架橋高分子の網目の不均一構造を顕微鏡により直接観察するとともに、放射光X線散乱により相補的に構造評価を行うことを目的とする。試料としてポリ(オキシプロピレン)グリコール(PPG, 分子量1000および8000の混合物で分子量1000の成分が30および70%であるもの)およびリジントリイソシアネート(LTI)を用いて合成した。得られた試料について、インターミッテントモードAFM観察および大型放射光施設(SPring-8)において小角X線散乱測定を行い網目構造を評価した。原子間力顕微鏡(AFM)による直接観察により、分子量1000のPPGの分率が高い場合、相対的に弾性率が高い相が孤立して存在することが明らかとなった。これは、高い反応性を有する分子量1000のPPGが重合過程で直ちに反応したことに由来すると考えられ、化学架橋高分子における不均一相が存在することが明らかとなった。
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Macromolecules
巻: 50 ページ: 1008-1015
10.1021/acs.macromol.6b02044
Polymer
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1016/j.polymer.2017.03.031