研究課題/領域番号 |
26410139
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
小林 元康 工学院大学, 工学部, 教授 (50323176)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 接着 / ポリマー / 水素結合 / ブラシ / 剥離 / 表面凝着力測定 / 中性子反射率測定 |
研究実績の概要 |
水素結合は共有結合より弱いがvan der Waals結合より強い結合であることから、本研究ではこの相互作用を利用した可逆的接着の可能性を検討した。具体的にはOHのようなプロトン供与性官能基(PHEMA)とメトキシエチル基のようなプロトン受容性官能基を有するポリマー(PMEMA)をそれぞれ固体表面に固定化し、両者を貼り合わせることで水素結合による接着を試みた。また、ポリ4-ビニルピリジン(P4VP)およびポリヒドロキシスチレン(P4HS)ブラシも調製した。 メタノールを用いて貼り合わせたところPHEMA-PMEMAブラシ基板は接着し、引張りせん断接着強度は4.0 kPaであった。さらに、PHEMAとP4VPブラシの組み合わせでは330 kPaの引張りせん断接着強度を示し、P4HSとP4VPブラシでは890 kPaに達した。基板を貼り合わせる際に良溶媒のメタノールを介在させるとポリマーブラシが十分に膨潤するとともに対向するブラシ同士が界面にて接触する確率が増え、多点で水素結合が形成されやすくなることで接着強度が増大したと考えられる。また、フェノール性水酸基の酸性度は高く、4HSのpKa (9.9)はHEMA(13.8)よりも小さいことから、P4HSはPHEMAよりも強く水素結合でP4VPブラシと相互作用していると考えられる。また、接着した基板をメタノールに浸漬したところ、約20分以内に基板は剥離した。剥離後もブラシ薄膜は基板上に残存しており、再びメタノールを介在させて貼り合わせることで接着した。従って、接着と剥離はブラシ界面で生じており、繰り返し接着が可能な機能を有することが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
水素結合は静電相互作用や共有結合より弱いため実用性に耐えうる接着強度は得られにくいと予想されたが、実際には高分子の種類をうまく選択すると1 MPa近くの引張りせん断接着強度が得られた。この他にも、当初の計画では予想できなかった接着結果がエチレングリコール型のポリマーブラシ界面から得られており、水素結合とは異なる接着機構の解明を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
ほぼ当初の計画通り研究を進め、本年度は(1)アミノ酸含有ポリマーブラシの合成と接着試験、(2)走査フォース顕微鏡(SFM)による表面凝着力測定を行う。また、計画当初予想できなかった興味深い実験結果が得られていることから、次年度に展開する予定であった(1)グラフト密度の異なるポリマーブラシの調製、(2)中性子反射率(NR)測定による接着界面の構造解析、などの実験を今年度に前倒しして実行する。
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