| 研究実績の概要 |
27年度に引き続き常法では合成困難な主鎖骨格を含む高分子の合成を中心に検討を実施した。2,3-ブタジエニレン（[2]デンドラレン）骨格の変換の検討が昨年度は十分ではなかったことから、Diels-Alder反応以外の反応について検討し、特に[2]デンドラレン骨格のチオール-エン反応を実施し、スチルベン骨格含有共役型高分子への変換を試みた。モデル反応として実施した2,3-ジアリール[2]デンドラレンとの反応では、生成物の実に約７割がcis-スチルベン型生成物であり、約３割がtrans-スチルベン型であった。一般的にtrans-スチルベン類はcis型に比べて熱力学的に安定であることから優先して生成する傾向にあるが、全く異なる結果が得られた。そこで、[2]デンドラレン骨格を含む交差共役型高分子に対してチオール-エン反応を行った。その結果、trans-スチルベン型ユニットの割合が増えたもののcis/trans比はほぼ1/1であり、trans体が多く生成することはなく、これは興味深い結果である。
研究の過程でジアリール隣接置換デンドラレン類は、いわゆる凝集誘起発光（AIE）挙動を示すことを明らかにすることができた。[2]デンドラレン類に加えて[4]デンドラレン類もAIE挙動を示し、ジアリール隣接置換デンドラレン類が固体状態でAIEを示すことを初めて明らかにした。
28年度で予定されていた交差共役型高分子をチオフェン含有共役型高分子への変換を実施することはできなかった。これは、上述した予想外の興味深い結果が得られたため、これらの研究を行ったためである。また、ベンザイン類との反応でナフタレン骨格をもつ共役型高分子への変換についても検討した。しかし、種々反応条件を変えて実験を実施したが、検討した範囲では目的の反応を進行させる条件を見出すことはできなかった。
|
