研究実績の概要 |
前年度,ZP-CERによりホウ酸―1-(2,4-ジヒドロキシ-1-フェニルアゾ)-8-ヒドロキシナフタレン-3,6-ジスルホン酸(Hres)錯体生成反応系の生成反応速度定数(kf)を算出することに成功した.これを受け,今年度は,ホウ酸-Hres錯体の生成反応系をモデル反応系として,“錯体”の活性化パラメータ測定のための拡張型CERとしての温度可変型ZP-CERの創出に取り組んだ.活性化パラメータの測定には,精密なkfの測定が必須になる.これを達成するための手段として,印可電圧を変化させずに泳動時間を制御する方法をとった.通常,ホウ酸泳動緩衝溶液で満たしたキャピラリーにHres溶液のプラグを注入し,電圧を印可して電気泳動を行うが,ここではHresのプラグを注入した後,さらに泳動緩衝溶液を注入した.このときの泳動緩衝溶液の注入時間を変えることによって,キャピラリー内でのHres溶液プラグのスタート位置を種々に変化させ,電気泳動時の印可電圧を変えること無く泳動時間を制御することが出来た.また,ホウ酸を含まない泳動緩衝溶液の短いプラグをHres溶液プラグの前後に注入し,ホウ酸緩衝溶液とHresとの接触により電気泳動開始前に錯形成反応が進行することを防止した.各々の電気泳動図から得た泳動時間の増加に伴うホウ酸-Hres錯体ピークの相対ピーク面積の変化を擬一次反応として解析し,そのkfを算出した.ZP-CERによるkfの測定温度を15-25℃の間で変化させて,各測定温度におけるkfを測定した.これを基にアレニウスプロットおよびアイリングプロットを作製し,活性化エネルギー,活性化自由エネルギー,活性化エンタルピーおよび活性化エントロピーを得ることが出来た.すなわち,“錯体”の活性化パラメータ測定のための拡張型CERとしての温度可変型ZP-CERの開発に成功した.
|