研究課題/領域番号 |
26410148
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
湯地 昭夫 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60144193)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | イオン交換樹脂 / 官能基 / 空隙体積 / 固相抽出 / 残存シラノール / ODS |
研究実績の概要 |
(1)通常の官能基密度を有する市販の弱塩基性陰イオン交換樹脂に対する酸の共吸着について評価した。疎水性の高い陰イオンを含む酸の場合ほど共吸着定数の値が大きいことを明らかにした。また、これまでバラツキの多かった過塩素酸イオンに対する選択係数はイオン選択電極を用いることで適切に評価できることを示した。低交換容量の樹脂については誘導体化が終わって性能評価が始まっている。 (2)交換基密度の異なる一連のイミノ二酢酸型キレート樹脂の酸解離平衡を解析した結果、交換容量が小さいものほど塩基性が高くなったことから、当初に期待した官能基間の相互作用の消失による酸型の不安定化は起こっておらず、むしろ支持母体全体の極性が下がることによって酸型の安定化が起こっていることが明らかになった。また、支持電解質濃度が高くなると解離型の化学種が安定化を受けるために、金属イオンの吸着能力が低下することを明らかにした。 (3)イオン交換樹脂中における空隙体積については、陰陽いずれの樹脂についても評価を終えた。ゲル型の樹脂では、浸透圧に差がないような等張状態ではイオンの種類によらず一定の内部体積を示した。一方、共存する水溶液の濃度が低いと、交換したイオンの水和力を反映して樹脂が膨潤し、空隙体積が増加するとともに内部溶液の濃度が下がることを見出した。これに対して、マクロポーラス型樹脂では、マクロポアの緩衝作用のために内部体積は塩濃度に依存せず、内部には潮が濃縮される傾向があるのを見出した。 (4)上記と比べて、交換基が固定されていないという利点を考慮して、新たにオクタデシルシリル基を有する固相に脂溶性試薬を物理的に担持した交換体について、評価を始めた。その結果、含窒素試薬の担持には、単純な分配の他に、残存するシラノールとの水素結合による化学的吸着も寄与していることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)弱塩基性陰イオン交換樹脂については、通常の樹脂の評価が終わっているのに対して、低交換容量樹脂の合成に手間取ったために予定よりは遅れている。しかしながら、既に合成を済ませているので、比較的短時間で評価し、結論を出せる見込みである。 (2)イミノ二酢酸型キレート樹脂については、当初の予想と異なり、官能基間相互作用は観測されなかったが、代わりに、支持体の極性が及ぼす影響を明らかにすることができた。以上の結果について論文投稿の準備中である (3)イオン交換樹脂中でイオン交換に利用可能な空隙体積については、陰陽いずれについても評価を終わり、合理的な解釈に達しており、論文投稿の準備中である。 (4)この他に、逆相樹脂を用いる固相抽出系で残存シラノールが重要な役割を果たすことを見出したので、この点について系統的な研究をスタートさせることができた。 以上の理由から、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
上述したように、(1)については合成が終了して解析が始まっており、近々に結論が得られるものと考えている。 (3)については、一連の形状の異なる大きな陰イオンによるイオン交換を検討し、既に得られている空隙体積との整合性について検討する。 一方、新たな課題(4)については、オクタデシルシリル相の相転移が比較的低温で起こりその前後で挙動の異なることが期待されるため、温度の影響を詳しく検討する予定である。また、この手法を初めて検討した研究では酸素のみを含む試薬を用いているため、含窒素以外の化合物についても評価を行う予定である。更に、得られた結果を基に、分析化学的に応用できる反応系を具体的に創案して、実用的な展開を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
(1)で述べた低交換容量の樹脂合成に手間取ったために、年度内に評価をすることができず、その費用を繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
既に述べたように、年度内に合成が完了したので、今年度に評価を行うのに繰越金を用いる。
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備考 |
今年度中に全面的な改定を行う予定である。
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