研究課題/領域番号 |
26410149
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
西 直哉 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10372567)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | イオン液体 / 液液界面 / ナノファイバー / 界面電子移動 / 還元 / 塩化金酸 / 電荷移動ボルタンメトリー / 溶融塩 |
研究実績の概要 |
前年度に発見した樹枝状金ナノファイバーの生成メカニズムを探るべく、以下の研究を行った。 1.液液界面上に還元析出する金属が、より高粘度な液相側に成長するというScholzとHasseのモデルが本研究のイオン液体|水界面における樹枝状金ナノファイバーの生成の際に成り立つかどうかを検討した。イオン液体の代わりに、低粘性有機溶媒や増粘有機溶媒、イオン液体を添加した有機溶媒を用いて、生成物の構造を調べた。その結果、ナノファイバーという異方性の高い1次元構造の発現には高い粘度が必要であること、樹枝状構造の発現にはイオン液体の存在が必要であることがわかった。 2.イオン液体構成イオンに、界面活性のあるイオンとないイオンを用いて、樹枝状構造に及ぼす影響を調べた。カチオンを変えても樹枝状金ナノファイバーにほぼ変化はなかったが、アニオンの場合には、界面活性のあるイオンで、樹枝状構造が顕著であった。イオン液体中の金ナノ粒子表面にはアニオンが選択的に存在すると提唱されており、樹枝状金ナノファイバーでもそのようになっている可能性がある。 3.液浸レンズを用いた光学顕微鏡により、反応中のイオン液体|水界面のその場観察を行った。反応開始後、20分ほどで、輝点が観測され始め、その後、輝点の面密度が増加した。この輝点は樹枝状金ナノファイバーが凝集したものと考えられる。輝点からのラマン散乱を観測したところ、金ナノ構造に由来すると考えられる高い表面増強効果を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定であった、生成メカニズムの検討や粘度やイオン種の影響の精査が、行えている。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の研究成果を踏まえて、以下の研究を行う。 1.【界面電位差制御による金属ナノ構造の精密制御】これまでは金属ナノ構造が自発的に生成する系で、樹枝状金ナノファイバーを得ることに成功している。界面電位差が制御できれば、得られる構造の精密制御が可能になると考えられる。そこで、還元力の異なる還元剤を複数種試し、界面電位差を制御できる系を構築し、金属ナノ構造を精密制御する。 2.【金ナノファイバーの生成過程のさらなる調査】樹枝状金ナノファイバー構造がなぜ生成するのかを、液液界面分光エリプソメトリーにより調べる。ナノファイバー生成の初期段階において液液界面に存在する金の形態を局所表面プラズモン共鳴吸収を利用して明らかにする。 3.【他の貴金属への応用】Pt,Pd,Agなど、他の貴金属へ応用する。Pt,Pdについては触媒活性を、Agについては表面増強ラマン活性を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度に「次年度使用額」が生じたため。今年度は順調に研究が進んでおり、前年度より今年度の「次年度使用額」は少ない。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度も順調に研究を進めていく。
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