研究課題/領域番号 |
26410153
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
大堺 利行 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (30183023)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 溶媒和エネルギー / 非ボルン型理論 / イオン移動ボルタンメトリー / 薬剤 |
研究実績の概要 |
イオンの溶媒和エネルギーは、電解質を用いる反応系、とりわけ溶媒抽出、液クロ、電気分析などの分離・検出系の理解において基礎的に重要である。これまでイオン溶媒和エネルギーは、主としてボルン式に代表される静電理論に基づいて解釈されてきたが、本研究では研究代表者らが新たに提案した非ボルン型溶媒和モデルを用いて、酸解離指数(pKa値)、電子移動の再配置エネルギー、イオンの液液界面吸着エネルギー、イオン性薬剤の生体膜透過などの理論的解析に応用し、本モデルの有用性を明らかにすることを目的としている。初年度にあたる本年度は、以下の理論的ならびに実験的研究について成果を得た。 1)非ボルン型溶媒和モデルを荷電基を有する有機イオンの水和エネルギーに適用した結果を国際会議(International Society of Electrochemistryの年会、スイス)と学術雑誌(RSC Adv., 2014)に報告した。 2)購入したパソコンと現有の装置を用いてイオン移動ボルタンメトリー測定システムを作成し、有機イオン(各種イオン性薬剤を含む)の油水界面移動ギブズエネルギーを測定した。 3)有機イオンが水相から油相へ抽出される際にイオンに伴って移動する水分子の数(n)をカールフィッシャー法を用いて測定したところ、nの値が有機イオンの荷電基上の表面電場に明確に依存することが明らかになった。 4)上の結果をふまえて、有機イオンの溶媒間移行エネルギーを見積もるアルゴリズムを作成し、理論的な解析を行った。その結果、実験値と理論値の誤差は2 kJ/mol(イオン移動電位に換算して20 mV)ほどであり、十分な実用的価値があることが分かった。 5)非ボルン型モデルに基づいて様々な酸のpKa値の予測を試みたところ、大雑把ではあるがpKaの値を予測できることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
「研究実績の概要」で述べた1)~4)の研究実績は、当初の研究計画のとおりに達成されたものである。さらに、平成27年度以降に予定されていた5)の研究内容についても一部の成果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の平成27年度以降の研究計画では、非ボルン型モデルのpKa値およびイオン性薬剤の生体膜透過性の理論的予測への応用についてのものであったが、前者についてはすでに予備的解析が終わり、現在の計算レベルでは実用に堪えうる精度でのpKa値の予測が難しいことが分かった。一方、後者については油水界面でのイオンのギブズ移動エネルギーが生体膜透過の指標として極めて有用であることが示唆されている。今後は、こちらへの応用に重点を置いて、研究を進めていく予定である。
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備考 |
研究室のホームページに、研究内容に関する概略と過去の発表論文や学会発表などについて掲載しています。
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