| 研究課題/領域番号 |
26410157
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| 研究機関 | 鹿児島大学 |
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研究代表者 |
神崎 亮 鹿児島大学, 理工学域理学系, 准教授 (50363320)
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| 研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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| キーワード | イオン液体 / 分光光度法 / 錯生成反応 / 溶媒和 / ドナー数 |
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| 研究実績の概要 |
平成27年度は、分光光度滴定法によってブチルメチルイミダゾリウム（C4mim+）系イオン液体中における銅(II)クロロ錯生成定数の陰イオン依存性を明確化することができた．ビス（トリフルオロメタンスルホニル）アミド（Tf2N-）塩イオン液体中におけるクロロ錯生成定数は初年度においてその構造異性体の存在が錯生成定数決定における問題となっていたが、安定構造のみを追跡することで、前年までに得られていた他のイオン液体、すなわちBF4-塩およびトリフルオロメタンスルホン酸（TfO-）塩イオン液体中と比較可能な錯生成定数を決定することに成功した．さらに各錯体の固有スペクトルから、BF4-、TfO-塩中では銅(II)トリクロロ錯体は４配位構造（すなわち溶媒陰イオンは単座配位）しているのに対し、Tf2N-塩中ではトリクロロ錯体は５配位構造であり、溶媒Tf2N-は２座配位していることが示された．Tf2N-の構造が溶存陽イオンに与える影響を熱力学的に見積もることができた良い例である．
一方、これらを裏付けるために他のエネルギー論的視点、特に今回同時に予定していた反応熱測定による錯生成エンタルピーによるアプローチが有用である．既存の熱量計は水溶液試料用に設計されているので、イオン液体測定の条件である少量かつ粘度の高い試料へ対応できるよう、反応容器を中心とした測定システムの再設計を行った．新しい反応容器の導入までは完了したが、27年度の目標であった校正および結果の検証には至らなかった．
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
達成度の評価に最も影響を与えているのは、反応熱量測定装置の開発の遅れである．27年度の主要な目標は、既存の反応熱量測定装置を改修し、イオン液体に対応した装置を開発することであった．錯生成定数の陰イオン依存性など、明らかにできた分も多いが、種々の要因はあるにせよ、このことが達成されなかった以上、研究計画は遅れていると判断せざるを得ない．ただし後述するように、このことは想定の範囲内であり、他の方法論によってカバーすることができる．
本プロジェクトでは、イオン液体の溶媒としての性質をエネルギー論からアプローチする方法として、イオン液体中における錯生成反応エンタルピーを決定することが主要なステップとなっており、方法論としてこれを直接的に観測できる反応熱量測定を想定している．27年度は、既存の反応熱量測定装置を改修し、イオン液体に対応した装置を開発することが、主要な目標であった．装置設計は最初の四半期で完了し、部品を発注したが、実際に納入され試作装置が完成したのは年が明けてからであった．さらに、熱安定性が十分でなく、反応エンタルピーを決定するのに十分な精度のデータを取得することができなかった．本来はこの状況からいくつかの試作品を経て精度を改善することを想定していたが、設計から納入に予想以上の時間がかかったため、トライアンドエラーを27年度内に繰り返すことができなかった．
一方で、反応熱測定を行うための基礎データは、この間に十分に充足することができた．また、最終的に熱量測定装置が満足できる精度を満たせない可能性は研究計画における想定の範囲内であり、これに頼らない方法論によって研究を継続し得る．28年度は並行して、引き続き装置の完成を目指す．
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| 今後の研究の推進方策 |
28年度はプロジェクトの最終年度であり、金属イオンの錯生成反応をターゲットとして、その反応ギブスエネルギー、エンタルピー、およびエントロピーから、エネルギー論的にイオン液体がどのような「反応媒体」であるかを確立する．鍵となるのは反応エンタルピーであり、これを決定することができれば、分かることが飛躍的に増加する．27年度の進捗を受けて、熱量測定装置の開発および調整は継続して進める一方で、並行して第２案、すなわち平衡定数の温度依存性から反応エンタルピーを決定する手法を採用する．これによって、当初の予定を質・量共に上回るデータを網羅的に集めることは難しくなったと予想されるが、プロジェクトの目標である「イオン液体はどのような溶媒か」へアプローチするための必要十分な情報を得ることは可能である．
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