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2015 年度 実施状況報告書

時間分解・蛍光X線イメージングによる,リーゼガングバンドの動的挙動の研究

研究課題

研究課題/領域番号 26410163
研究機関日本女子大学

研究代表者

林 久史  日本女子大学, 理学部, 教授 (60250833)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワードリーゼガングバンド / 時間分解・蛍光X線測定 / プルシアン青 / X線吸収分光 / 化学状態分析
研究実績の概要

難溶性塩を形成するアニオンとカチオンを湿潤ゲル中で分散させると、イオンがゲル中をゆっくり拡散し、再結晶がおこる。イオンの濃度やゲルの種類などの条件を整えると、微細な結晶粒のバンドが、離散的に出現することもある。このようなバンドをリーゼガングバンドという。本研究は、こうしたリーゼガングバンド形成の研究を視野に入れながら、これまで研究例のない「イオンを含むゲル中の元素分布やその時間変化」を追跡できるような、実験室用の時間分解・蛍光X線イメージングシステムの開発を目指すものである。

平成27年度は、前年度に完成した蛍光X線イメージングシステムを用いて、ゲル中でのイオン分布の時分割測定に挑戦した。主に対象とした系は、新規な沈殿・着色現象を探索する過程で見いだした「FeCl3とK3[Fe(CN)6]の混合系」であった。この系の着色現象についての報告例はこれまでなかったが、青と黄色の離散的なバンドが形成されることをあらたに発見し、その再現性も確認した。その上で、この系の蛍光X線イメージング測定を行ったところ、独特な多色バンド形成に伴う、Feイオン分布の時間変化の観測に成功した。その結果、黄色部分は、Feイオンの多量の蓄積を伴うことがわかった。一方、青色部分は、非常に希薄なFe化合物からできていることが示唆された。

さらに、十分熟成した試料について、放射光施設(PF・BL9C)でX線吸収測定を行い、ゲル内に生成している化学種についての知見を得た。黄色部分は、Clイオンを部分的に置換したFeイオンが主ということがわかった。これらの成果は、ただちにイギリス化学会の専門雑誌に論文発表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

最大の目的であった「ゲル試料の測定ができる、実験室用の時間分解・蛍光X線イメージングシステム」が完成しただけでなく、新たに見いだしたゲル着色系について、Feイオン分布の時間変化測定に成功し、論文発表までこぎつけたから。

今後の研究の推進方策

これまでの研究を通じて、本研究で提案している「時間分解・蛍光X線イメージング」は、「空間分解・X線吸収分光」と組み合わせると、より一層、リーゼガングバンドのサイエンスに肉薄できることがわかってきた。本年度は、これらふたつのX線分光法を組み合わせた研究を、他のゲル系にも適用していきたい。具体的な系としては、MnやCoと[Fe(CN)6]がつくる「プルシアン青・類似物」を考えている。得られた成果は、すみやかに論文発表したい。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] A combined X-ray spectroscopic study on the multicolored pattern formation in gels containing FeCl3 and K3[Fe(CN)6]2016

    • 著者名/発表者名
      Hisashi Hayashi and Hitoshi Abe
    • 雑誌名

      J. Anal. At. Spectrom.

      巻: 31 ページ: 912-923

    • DOI

      10.1039/c5ja00481k

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] FeCl3とK3[Fe(CN)6]を含むゲルに生成する「多色バンド」のX線分光分析2015

    • 著者名/発表者名
      林 久史,立野真代,阿部 仁
    • 学会等名
      第51回X線分析討論会
    • 発表場所
      姫路・西はりま地場産業センター(兵庫県・姫路市)
    • 年月日
      2015-10-29 – 2015-10-30

URL: 

公開日: 2017-01-06  

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