研究実績の概要 |
本研究は、大気汚染指標の一つである直径2.5μm以下の微粒子状物質(PM2.5)の元素分析のために、高い時間分解能を有する分析技術の開発を目的として研究を進めてきました。 PM2.5中の元素分析を高い時間分解能で行うために、チューブ状繊維フィルターを捕集デバイスとして開発しました。このチューブ状繊維フィルターに大気試料を通することによって、PM2.5を捕集します。その後、硝酸・塩酸の混酸を用いて、チューブ状繊維フィルターに捕集されたPM2.5の成分元素を溶出しながら、高感度な元素分析装置である誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)に導入し測定します。 H27年度までは、チューブ状繊維フィルターの充填剤の検討、溶出・測定条件の最適化、および気中粒子状物質の元素分析の有効性確認を行いました。H28年度は、本技術の実用化に向けて、大粒形粒子のカットオフ機能を有し、PM2.5捕集・計測システムの構築を試みました。 構築した計測システムは、PM2.5を含む指定粒形以下の微粒子状物質の捕集に有効であり、捕集した大気試料の容積は専用のPCソフトを用いてリアルタイムでモニタリングされ、捕集終了後に保存されます。のちに行われた成分元素分析結果と合わせ、大気中のPM2.5の元素成分の定量的な分析ができるようになりました。 本研究の期間中にチューブ状繊維フィルターを用いた高い時間分解能を有するPM2.5中の元素分析を確立しました。これにより、PM2.5中の分析対象であるNa, Al, K, Ca, Sc, V, Cr, Fe, Ni, Zn, As, Sb, Pbなどの高感度分析が可能となりました。 また、本技術の応用として、複数地点でPM2.5の実試料を採集し、分析しました。その結果をまとめ、近いうちに学会および学術専門誌での発表を予定しています。
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