研究課題/領域番号 |
26410170
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
村岡 貴博 東京工業大学, 生命理工学研究科, 助教 (70509132)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ポリエチレングリコール / 熱応答性 / 環状分子 / 生体関連化学 / 水溶性分子 / 分子集合体 |
研究実績の概要 |
多角形型に構造化した一連のPEG類縁体として、二角形、三角形、四角形、五角形、六角形PEGを合成し、特に水中での物性と熱応答性を比較した。室温において、鎖状PEGと比べ、多角形型PEGはいずれも水中で低い表面張力を与えたことから、疎水性が高いことがわかった。また、一連の多角形型PEG内においては、環サイズが大きくなるほど疎水性が増加することも表面張力測定から示唆された。これに対応するように、動的光散乱測定において、二角形、三角形、四角形PEGは水中でほぼ分子レベルで分散しているが、五角形、六角形は分子集合体を形成していることが示された。以上のように、室温では主に環サイズに依存した傾向が見られたが、70度では環サイズ依存性が見られず、トポロジー効果が示唆された。動的光散乱測定において、二角形、四角形、五角形は室温とほぼ同じ結果が示され顕著な熱応答性は見られなかったが、三角形と六角形では熱応答性が見られた。まず三角形では、室温での分散状態から、70度ではマイクロメートルサイズの分子集合体が形成されることが示され、温度上昇によって疎水性が増加する傾向が示唆された。また六角形では、室温での多分散な集合体形成から、70度では単分散性の集合体へと変化が見られた。こうした特徴的な分子形状の効果と熱応答性は、これまでの鎖状PEGでは見られなかった物性であり、以上の研究成果は、PEGの物性制御をより幅広く可能にする新たな指針になる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年度と本年度において、両親媒性PEGと構造化PEGを多種合成し、その物性評価とタンパク質安定化などの応用について検討してきた。その結果、分子構造と物性、特に熱応答性についての関連性を深く理解することができている。以上を踏まえ、既に当初の計画よりも数ヶ月早くタンパク質安定化に有効なPEG類縁体開発に着手しており、当初の計画以上のペースで研究を進展させることができている。
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今後の研究の推進方策 |
今後タンパク質安定化を指向したPEG類縁体の開発を目指す。そのためには、特にPEGの熱応答性の制御が鍵となると考える。これまでの比較検討の結果、三角形状のPEG分子構造が低温側での熱応答性を引き起こす上で有効であることが示されたことから、三角形を土台とした分子設計を行う。また芳香族性部位を導入した両親媒性PEGも凝集抑制などの安定化に効果的であることが示されていることから、「三角形」と「両親媒性」を合わせ持つ分子に着目し、その開発と物性評価を進める。
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