研究課題
最終年度において、両親媒性構造を有する多角形PEGの合成と機能評価を試みた。特に三角形について目的物を十分量合成することが出来、詳細に機能評価を行った。水中で加熱することで曇点を示し、加熱により脱水和され、疎水性を増すPEG特有の温度応答性を保持していることが示された。動的光散乱測定から、高温でマイクロメートルサイズの集合体を形成することが確認され、曇点評価と合理的な結果が示された。タンパク質に対する安定化効果、特に凝集抑制効果をリゾチームを用いて評価した。リゾチームに対し両親媒性構造を有する三角形PEGを可変量加え、加熱し、リゾチームの凝集形成の有無と、冷却後の残存酵素活性を定量的に評価した。リゾチームに対し100モル当量加えた場合、凝集は抑制され、70%近い残存酵素活性が示されたことから、両親媒性構造を有する三角形PEGが凝集抑制効果を有することが示された。また興味深いことに、リゾチームに対し1モル当量加えた場合も、凝集形成は完全に抑制され、また高い残存酵素活性が見られた。通常の凝集抑制剤は、タンパク質に対し過剰量添加する必要があるが、本研究で開発した両親媒性構造を有する三角形PEGは、等モル量添加で効果を示す他の材料にはない優位性があることが明らかとなった。本研究期間全体を通じて、両親媒性構造を有する鎖状PEG、ならびに多角形型に構造化した一連のPEG類縁体(二角形、三角形、四角形、五角形、六角形PEG)を開発し、それらの熱物性とタンパク質凝集抑制効果について網羅的、系統的に調べた。それらの知見に基づき、両構造を組み込んだ両親媒性構造を有する三角形PEGを最終年度において開発し、両親媒性構造と多角形構造が有する利点をあわせた、非常に効果的な凝集抑制剤を開発することに成功した。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件) 産業財産権 (2件) (うち外国 1件)
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