研究課題/領域番号 |
26410171
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
波多野 豊平 山形大学, 理工学研究科, 准教授 (20333990)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | スピンラベル剤 / イソインドール / 抗酸化物質 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,抗酸化物質に耐性を持ったスピンラベル剤を病原真菌細胞結合酵素に導入し,病原真菌に感染させた小松菜を用いて結合酵素の動的挙動をESRで計測することで,スピンラベル剤をトレーサーとした非侵襲の薬剤挙動計測法を確立することを目的としている。本年度は,抗酸化物質に耐性を持ったスピンラベル剤の合成とその耐性評価を行った。 -スピンラベル剤の合成- 合成は比較的安価に入手できるm-アニス酸を出発原料とし、ブロモ化,エステル化を行い,次にGrignard試薬によりアルキル基を二つ導入した三級アルコールを合成した。その後,アルコールを脱水反応によりオレフィンへと導き、マグネシウムによりGrignard試薬へと変換後,DMFを作用させることによって,アルデヒドを合成し,次にオキシムへと導いた。オキシムをシアノ水素化ホウ素ナトリウムにより還元し、ヒドロキシルアミンとしたのち,Reverse-Cope環化により環化し,直ちに銅触媒を用いて酸素雰囲気化で酸化することで,ニトロンへと導いた。合成したニトロンに対して,Grignard試薬を用いて3つ目のアルキル基を導入し、もう一度,銅触媒を用いて酸素雰囲気化で酸化し三置換ニトロンを合成した。最後に,4つ目のアルキル基をGrignard試薬を用いて導入し、ヒドロキシルアミンをタングステン触媒存在下,過酸化水素により酸化することで,目的物であるスピンラベル剤を合成した。 -スピンラベル剤の耐還元性の評価- 合成したスピンラベル剤を用いて,アスコルビン酸に対する耐還元性評価を行った。比較対象として,比較的耐還元性が高いC-プロキシルを用いた。合成した3つの化合物は,C-プロキシルよりも高い還元性を示し,中でも4つのエチル基を有するニトロキシラジカルが,非常に高い還元性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では,平成26年度中に融合タンパク質とスピンラベル部位の間でクリック反応を行い「スピンラベル部位と蛍光発色部位を導入した結合酵素」を合成する予定であった。しかし,スピンラベル部位の抗酸化物質に対する耐性を明らかにするため,イソインドール部位の置換基をいくつか変換し詳細に検討したため,最終段階での変換反応にたどり着くことができなかった。現在,耐性部位の評価がほぼ終わっており,リンカー部位の形成に取り組んでいる。また,別のスピントラップ剤からのアプローチも行っており,今後,「スピンラベル部位と蛍光発色部位を導入した結合酵素」を合成していく。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に達成できなかったリンカー部位の形成を引き続き行う。合成が達成でき次第,「スピンラベル部位と蛍光発色部位を導入した結合酵素」を作成し,病原真菌を用いた評価を,小松菜を用いておこなう。LバンドESRならびに蛍光顕微鏡での観察により,ESR計測の精度評価の検証を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していたように研究が進まず,学会での発表を断念したため。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度の物品費(試薬等)に充てる。
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