研究課題/領域番号 |
26410176
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
大吉 崇文 静岡大学, 理学(系)研究科(研究院), 講師 (80406529)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | グアニン四重鎖 / テロメア / RNA結合タンパク質 / エピジェネティクス / 非翻訳RNA |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的はグアニン四重鎖を特異的に認識するタンパク質の核酸結合性とテロメアやゲノム構造に対する作用を明らかにすることである。その中で1年目の平成26年度は、核酸結合タンパク質TAF15の核酸結合性の解明を計画していた。TAF15はチロシンを含むRGG3領域を含む核酸結合性タンパク質であり、テロメアから転写される非翻訳RNAであるTERRAに結合することがわかっている。そこでTAF15の核酸結合性を試験内で調べたところ、TAF15中のRGG領域とTERRAとはグアニン四重鎖構造依存的に結合するが、1本鎖や2本鎖のRNAやDNA、グアニン四重鎖DNAとはほとんど結合しないことがわかった。また、このRGG領域1分子に対してグアニン四重鎖RNA3分子と結合することがわかり、グアニン四重鎖構造中のループ部分の2'-OHを認識して結合することが明らかとなった。さらに、TAF15の細胞内の核酸結合性を解析した結果、グアニン四重鎖を形成するテロメアDNAには結合しないが、TERRAに結合することがわかり、試験官内の核酸結合性の結果を一致した。 また、予定以上に実験が進行したため、平成27年度に予定していたTAF15のテロメアにおける機能の解明のための実験を行った。テロメア中のヒストンは本来、高度にメチル化されておりヘテロクロマチンという凝集した構造を形成している。細胞内のTAF15の発現をsiRNAによって抑制すると、テロメアのヒストン中のメチル化の程度がより上昇し、ヘテロクロマチン化が進行することがわかった。この結果から、TAF15はテロメアのヘテロクロマチン化を抑制していることがわかった。これらの研究成果は日本化学会第95春季年会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初、平成26年度は核酸結合タンパク質TAF15の核酸結合性の解明をして、平成27年度はTAF15のテロメアにおける機能の解明を行なう予定だった。しかし、これまでに当研究室で行なってきた核酸結合タンパク質の核酸結合性の解析をするための実験方法が当該タンパク質にも適用できたため、予定より早くTAF15の核酸結合性が明らかにできた。すなわち、TAF15はRGG3領域でグアニン四重鎖依存的にRNAに結合して、グアニン四重鎖内のループ構造を認識することがわかった。さらに、タンパク質1分子に対して3分子のグアニン四重鎖RNAであるTERRAと結合することがわかった。そのため、平成27年度に実験予定だったTAF15のテロメアにおける機能の解明を進めた。その結果、TAF15はテロメアのヒストンH3の9番目のリシンのトリメチル化を抑制することがわかった。このヒストンH3の修飾能は細胞内のTERRAの役割であることが報告されている。これらの結果から、TAF15は細胞内でグアニン四重鎖依存的にTERRAに結合して、TERRAによるヒストン修飾能を阻害していることが考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は本年度に引き続きTAF15のテロメアにおける機能の解明を実行する予定である。これまでの結果より、TAF15はRGG3領域でグアニン四重鎖依存的にTERRAに結合することが試験管内と細胞内の実験によりわかった。さらにTAF15は、テロメアのヒストンH3のメチル化を抑制することもわかった。しかし、グアニン四重鎖に対する結合性とヒストン修飾能との直接的な関連は明らかになっていない。そこで、次年度では、この点を中心に明らかにしていく。特にTAF15は連続したグアニン四重鎖RNAと結合するとクラスターを形成することが試験管内の実験で示唆された。TERRAは細胞内でグアニン四重鎖が連続した構造を形成していると考えられ、クラスターを形成することが見いだされてる。申請者らが試験内の実験により見出したTAF15の特徴的なグアニン四重鎖結合性に対して、細胞内のTERRAのクラスター形成とヒストン修飾能との関わりを詳細に解明していく。 また、平成28年度に予定していたグアニン四重鎖結合タンパク質によるゲノム構造の制御機構の解明を前倒しして実行して、より詳細にこの機構について研究できるようにする。特に本年度では、グアニン四重鎖結合タンパク質の発現制御によってヒストンの修飾が変化するゲノム領域を特定する。
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