研究課題
前年度までに既に開発に成功している、アルキン基を持つ化学反応性膜蛋白質可溶化試薬Alk-C3-DKDKC12Kとアジド基を両端に持つPEG誘導体(Bis-azide-PEG)を用い、膜蛋白質を内包固定化した立体的なゲル構造体の作製手法の確立、さらに固定化された膜蛋白質の機能評価を行った。立体的な構造体作製には押出形の3Dプリンターを活用し、プログラムコントロールされたノズルの先端でAlk-C3-DKDKC12KとBis-azide-PEGが混合・ゲル化と同時に印刷されるシステムを組むことで、膜蛋白質内包繊維状ゲルの積層化を検討した。残念ながら、ただ単にHuisgen環化反応を用いたAlk-C3-DKDKC12KとBis-azide-PEGの間の架橋反応だけではゲル硬度が不十分であったが、2次架橋剤となるグルタルアルデヒドを添加しながら3D印刷を行うことで、多段に積み上げてもゲル繊維同士が融合しない、3Dゲル構造体の作製に成功した。3Dプリンターのプログラムを変更することで、同様の原理に従って様々な形状の膜蛋白質内包3次元ゲル構造体も構築可能と思われる。通常水和ゲルの中に膜蛋白質などの生体高分子を固定化した場合、ゲル内部で基質の拡散速度が制限され、それにより固定化された膜蛋白質機能が制限を受けることが危惧される。しかし、今回検討を行ったAlk-C3-DKDKC12KとBis-azide-PEGの架橋により得られる膜蛋白質内包ゲル内部は、比較的基質の拡散速度が高く、さらに繊維状にゲルを成形することで、バッファー溶液中と比較し1/3程度の見かけの活性の維持が見られた。以上これまで3年間の検討から、新規の化学反応性膜蛋白質を利用した、膜蛋白質の新規ゲル化手法の確立と、さらにこれを用いた様々な立体形状を持つ膜蛋白質固定化材料構築の手法の提示に成功したと考える。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (17件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
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