核酸と相互作用するたんぱく質に重要なリジン残基の機能や位置を調べたり、特定のリジン残基に機能性官能基を導入することは、たんぱく質機能研究や、新たな機能性蛋白質の開発に重要である。緩和な条件でたんぱく質の部位特異的リジンの化学修飾を行うことを目的に中性条件下、一級アミンと反応して5員環アミンを形成する1、4-ジカルボニル構造を導入した反応性核酸1,2を合成し、反応性を検討した。反応性核酸1はDNAの酸化的損傷部位として知られるC4位脱塩基部位の2位メトキシ誘導体であり、C4位脱塩基部位に比べ脱離反応による分解が起こりにくい利点を持つ。還元条件下、1が高収率で一級アミノ基と反応し、5員環アミン構造を持つ核酸アミンコンジュゲート化合物に変換することを見出した。また反応性核酸2はベンゼンに縮環した1、4-ジカルボニル構造をもち、中性条件下、一級アミンと反応し効率よく3-メチレンイソインドリン-1-オン(MIOと略する)に変換した。ベンゼン部にジメトキシ基を導入したMIOは蛍光性を示すこと、また蛍光分子として知られるその酸素同族体、ジメトキシフタルイミドよりに比べ安定である(pH8の弱塩基性条件)ことを明らかにした。MIOの蛍光性はこれまで注目されていなかったが、安定性、ターンオン蛍光修飾に利用できることと合わせ、有用な蛍光分子として期待できる。反応性核酸1、2を用いて、DNA結合性蛋白質のリジン残基との部位特異的クロスリンク形成、また部位特異的ターンオン型蛍光修飾にそれぞれ成功した。またMIOは部分構造であるエキソオレフィン部で1、3-双極子環化付加反応が進行することを見出し、MIOによるたんぱく質化学修飾を経て、機能性官能基の導入を検討中である。更にMIOへの置換基導入による新たな蛍光分子創出も検討中である。
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