研究課題/領域番号 |
26410182
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
兒玉 浩明 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80205418)
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研究分担者 |
長田 聡史 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50284609)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | シグナル伝達 / 生体分子 / 生理活性 / 二量体ペプチド |
研究実績の概要 |
平成26年度は、ヒト好中球上に二量体として存在していると考えているホルミルペプチド受容体の2つのプロトマーがそれぞれ個別に機能していることを評価する目的で、ホルミルペプチド受容体の2つのサブタイプに選択的な2種類のアゴニストを共有結合で架橋したハイブリッド二量体を合成した。これまでの研究から、架橋部位はペプチドの活性に影響しない部位を選択した。また、架橋剤は架橋するペプチドや合成二量体の溶解度を考慮し、二量体ペプチドをデザインとした。今回、2つのペプチドにシステイン残基を導入し、ジスルフィド結合で架橋したアナログの他に、ペプチド合成樹脂上で2種類のペプチドをグリシンや長鎖アルキルアミノ酸を用いタンデムにつないだハイブリッド二量体も合わせて合成した。 ペプチド合成は迅速に生成物を得るため、Fmoc固相合成法をでおこなった。アミノ酸の縮合はHBTU-HOBt法で、Fmoc基の除去はピペリジンを用いた。ホルミル基はギ酸-EEDQ法で導入した。脱樹脂後、HPLCで精製した。ペプチドの構造はMALDI-TOF MSで確認した。 得られたペプチドの生物活性は、分化HL-60細胞を用い、細胞内カルシウム濃度変化として評価した。ハイブリッド二量体はfMLPとほぼ同程度の生理活性を示した。また、サブタイプ選択的アンタゴニストの存在下で実験を行った結果、FPRの2つのサブタイプのいずれとも相互作用していることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究計画であるホルミルペプチド受容体の2つのサブタイプに選択的な2種類のアゴニストを共有結合で架橋したハイブリッド二量体の合成が完了したことから判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、ヒト好中球等の細胞膜上に発現している受容体タンパク質の多量体形成を、化学合成したヘテロ二量体ペプチドを用いて特定することを試みる。以前、光架橋アミノ酸を持つfMLPアナログを用いて好中球に発現する受容体タンパク質を特定したところ、遺伝子配列から計算される単量体の分子量を持つタンパク質だけが検出され、二量化会合体の特定には至らなかった(Protein Pept. Lett.,2003)。そこで平成26年度に開発したヘテロ二量体およびホモ二量体ペプチドを二価的に光架橋アミノ酸で置換した誘導の開発と受容体タンパク質との二価的相互作用をタンパク質レベルで検出することを試みる。光架橋アミノ酸としては、申請者らも既に実績を持つ、p-ベンゾイルフェニルアラニンを用いる。2つの受容体の選択的光架橋が必要になった場合は、クロロメチルケトン体、もしくはp-アジドフェニルアラニンを使用する。得られたタンパク質は、MALDI-TOF MSでフラグメント解析を行い、受容体タンパク質である事を同定する。また、光架橋の際、ラベルしていない単量体、もしくは二量体ペプチドを共存させ、ラベルされるタンパク質量の変化から、受容体—リガンドの二価的相互作用を考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今回合成したペプチド類が有用な生物活性を示したため、当初予定した化学合成より先に活性測定に重点を置いて研究を進めたため、予定していた消耗品の使用が少なくなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、今年度予定していた計画を含めて、計画通りの研究を進める予定である。
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