研究課題
藻類由来の多官能性カロテノイドであるフコキサンチンは、海洋光合成初期過程において、クロロフィルおよびタンパク質と共に超分子複合体(FCP)を形成し、吸収した光エネルギーを超効率的に(80%以上)クロロフィルへ伝達する。本研究の目的は、この超効率的エネルギー伝達機構の解明である。これまでの研究により、超効率的なエネルギー伝達に関与すると考えられるICT(分子内電荷移動)エネルギー準位の存在を実証し、フコキサンチンが持つ特徴的な構造(アレンおよびカルボニル基が共役したポリエン)がICT準位の発現を可能にすることを明らかにした。しかし、FCPの再構成は未だ達成されておらず、エネルギー伝達機構の解明には至っていない。光合成細菌由来のカロテノイドであるスフェロイデノンは、鎖状のポリエン構造を持ち、超分子複合体の再構成技術が確立されている。本研究では、ICT特性を持ち、超分子複合体の再構成が期待できる化合物としてパラセントロンを設計した。パラセントロンは、天然物アポカロテノイドであり、スフェロイデノンの鎖状構造とフコキサンチンのポリエン構造を合わせ持つハイブリッド化合物である。パラセントロンの効率的な合成を達成し、超分子複合体の再構成と機能解析により、光合成の超効率的なエネルギー伝達機構の解明を目指すこととした。前年度までに、ポリエン骨格の構築のため新奇な両官能性C5ジエンユニットを開発し、クロスカップリング反応を鍵とするパラセントロンの立体選択的合成を達成した。しかし、アレン構築下でのホウ素官能基の共存性に課題が残った。今年度は、アレン構築後にクロスカップリングを行う新ルートにより先の課題を解決し、パラセントロンの改良合成に成功した。得られたパラセントロンの時間分解吸収スペクトル測定により、パラセントロンがフコキサンチンと類似のICT特性を有することを明らかにできた。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 4件)
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