研究課題/領域番号 |
26410184
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
円谷 健 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00372855)
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研究分担者 |
藤井 郁雄 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70189984)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 抗体酵素 / 遷移状態アナログ / 抗原 / モノクローナル抗体 / ハイブリドーマ |
研究実績の概要 |
天然のような高い特異性と優れた反応効率を兼ね備えた人工酵素を作り上げることは,化学者の究極の目標である.これまでに検討された人工酵素の方法論で最も信頼できる方法の一つが,抗体タンパク質を利用する方法である.化学反応の遷移状態を模倣した遷移状態アナログをハプテンとして免疫すると,天然酵素と同様の性質を示す抗体酵素が得られる.本研究では,抗原結合部位に人工コファクター結合部位を導入することにより,抗体酵素の新しい機能を創出する.これまでに様々な抗体酵素が作成されてきたが,その触媒活性は,天然酵素と比べてかなり低いのが現状である.そこで,これまでの抗体酵素の問題点を明らかにし,その解決策として従来とは異なる新たな抗体酵素の作製法(ホロ酵素型抗体酵素法)を開発する.こららの研究は,学術的には酵素の機能発現原理の解明に貢献し,工学的には実用的なテーラーメイド人工酵素の開発につながる. 本年度は,アミン型コファクター合成し,アミン型コファクター存在下でアルドール反応を検討し,反応を触媒する抗体酵素を特定した. (1) アミン型コファクターの合成:アミン型コファクターを合成した. (2)モノクローナル抗体の大量調製:すでに得られている50個のリン酸ジエステル型ハプテン結合性抗体産生ハイブリドーマについて大量培養した.抗体は抗マウスIgG アフィニティークロマトグラフィーを用いてFPLCにより精製した. (3) アルドール反応を触媒する抗体酵素の創出:50個のリン酸ジエステル型ハプテン結合性モノクローナル抗体についてアルデヒドおよびアセトンを基質として,アミン型人工コファクターを用いてスクリーニングして,アルドール反応を触媒する抗体酵素を特定した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,ます,交付申請書に記載のアミン型コファクターを合成し,50個のモノクローナル抗体についてアミン型コファクターの存在下でアルドール反応を行い,反応活性な抗体酵素をスクリーニングした結果,複数個のアルドール反応を触媒する抗体酵素を獲得することに成功した.従って,当初の計画をほぼ順調に遂行することができた.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までに得られた結果を基にして,獲得した抗体酵素の触媒活性の詳細について検討することにより,抗体酵素の触媒機構を明らかにすると同時に抗体酵素の立体構造の解明を行う. (1) 抗体酵素の反応速度パラメータの決定:アルドール反応について触媒活性の観測された抗体について,マウス腹水あるいはハイブリドーマの高密度培養によりハイブリドーマを大量調製し,モノクローナル抗体をアフィニティークロマトグラフィーにより精製する.その後,得られた抗体を用いて反応速度と基質濃度との関係を調べ,Michaelis-Menten の式より反応速度パラメーター(kcatおよびKm)を決定する.また,それぞれの反応について,pH依存性を検討し,触媒残基を推定する. (2) 抗体酵素の遺伝子クローニング:抗体酵素をコードする遺伝子をマウス抗体遺伝子クローニング用プライマーを用いて増幅させ,抗体発現用ベクターへ組み込みクローニングを行う.得られたベクターを大腸菌に導入し,ELISA法により抗体の発現を確認後,DNAシークエンスにより抗体のアミノ酸配列を推定する. (3) 抗体酵素のX線結晶解析:抗体を大量培養した後,パパインで消化し,抗体Fab断片を調製する.イオン交換クロマトグラフィーにより同一の等電点をもつ画分を回収し,リン酸ジエステル型ハプテンと混合し,共結晶を作製する.共結晶についてX線回折測定を行い,抗体の立体構造を決定する.結晶化が困難な場合には,アミノ酸配列をもとにコンピュータシュミレーションにより抗体の立体構造を推定する.得られた立体構造を基に抗体酵素がどのような分子機構により触媒活性を発現しているかを明らかにする.
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