研究課題
化学反応の遷移状態を模倣した遷移状態アナログをハプテンとして免疫すると,天然酵素と同様の性質を示す抗体酵素が得られる.本研究では,抗原結合部位に人工コファクターを導入することにより,抗体酵素の新しい機能を創出する.これまでに,様々な抗体酵素が作成されてきたが,その触媒活性は,天然酵素と比べてかなり低いのが現状である.そこで,これまでの抗体酵素の問題点を明らかにし,その解決策として従来とは異なる抗体酵素の作製法(ホロ酵素型抗体酵素法)を開発する.これらの研究は,学術的には酵素の機能発現原理の解明に貢献し,光学的には実用的なテーラーメイド人工酵素の開発につながる本年度は昨年度に引き続きホロ酵素型抗体酵素の触媒機構の詳細について検討すると同時に,抗体酵素の立体構造の解明を行った.(1)金属錯体含有コファクターの設計,合成および金属錯体含有コファクターを用いた反応の検討:新規金属錯体コファクターを設計,合成した.金属錯体含有コファクターとしては,水中で安定であることが必須であるため,既に水中で過酸化水素の共存下で酸化反応触媒として実績のあるRu錯体を用いた.さらに,合成した金属錯体コファクターを用いて酸化反応を検討した.(2)酸性コファクターおよびカルボン酸コファクターの合成およびこれらを用いた酸触媒反応の検討:新規酸性型コファクター2種類およびカルボン酸型コファクターを合成し,これらを用いて酸触媒反応を検討した.(3)抗体酵素のX線結晶解析:27C1とハプテンとの共結晶についてSPring-8で回折X線を測定し,その結果を解析することにより,27C1とハプテンとの錯体の立体構造を明らかにした.
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
Biophysics and Physicobiology
巻: 13 ページ: 135-138
10.2142/biophysico.13.0_135
ACS Chemical Biology
巻: 11 ページ: 2803-2811