研究課題/領域番号 |
26410188
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
高橋 俊太郎 甲南大学, 先端生命工学研究所, 講師 (40456257)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | DNA / 複製 / グアニン四重鎖 / 分子クラウディング / i-motif |
研究実績の概要 |
本研究ではDNA複製反応の経時的な観察を行い、鋳型核酸の安定性および周囲の分子環境によって複製速度が制御されるメカニズムを定量的に解明することである。平成26年度は様々な高次構造を持つ鋳型核酸が複製反応に及ぼす影響を検討した。Klenow Fragment DNAポリメラーゼを用いたゲル電気泳動による予備的な実験により、鋳型核酸中にグアニン四重鎖が形成されるとその安定性に応じて複製反応速度が低下した。特に4枚のグアニン-カルテットからなるグアニン四重鎖の場合は、Klenow Fragmentが四重鎖構造の手前で複製反応を停止させた。同様の手法で、これらの相補的な鋳型核酸についても同様に複製反応の影響を検討したところ、弱酸性(pH 6.0)環境において複製反応速度が低下した。この場合、シトシンリッチな配列がi-motif構造を形成し、その高次構造によっても複製反応が阻害された事が示唆された。特に、ヒトのがん細胞の活性に関わるHif1α遺伝子配列を用いた場合、i-motif構造形成に伴う複製反応の停止が観察され、i-motif構造も複製反応の障害になり得ることが示された。 周囲の分子環境の影響についても検討を進めている。溶媒環境の効果においては、分子クラウディング効果をもたらすポリエチレングリコール(平均分子量200)共存下においてグアニン四重鎖による複製速度の低下が顕著に観察された。一方で、i-motifを形成するDNAの複製速度に関してはあまり影響が無かった。さらに圧力の効果も検討を始め、グアニン四重鎖を持つ鋳型DNAの構造が圧力によって不安定化することを見出した(高圧力の科学と技術(2015)in press)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
様々な高次構造を持つ鋳型核酸の複製反応に対する影響を検討し、その安定性に応じて反応速度が低下、さらには停止することが確認できた。特にi-motifによる影響はこれまで報告例が無く、新たな知見である。また分子環境に伴う影響も既に検討し始めており、ポリエチレングリコールによる分子クラウディング効果が複製反応に及ぼす影響や、高圧力による鋳型DNA安定性の効果など、複製反応の分子環境特性の解析が出来つつある。以上から研究課題に対する進捗は現在までのところ順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
鋳型DNAの種々の高次構造が与える複製反応への影響を調べるために、UVメルティング法を用いて鋳型DNAの安定性の熱力学的パラメータを定量的に算出する。また開発中の複製反応のリアルタイム観察法の条件検討を行い、複製速度を定量化する。得られたDNAの熱力学パラメータと複製反応の速度パラメータを相関付ける。鋳型DNAの効構造形成に関する速度パラメータに関してもストップトフローなどを用いて解析し、複製速度と関連性があるか検討する。分子クラウディング環境や圧力による影響に関しても、定量的に結果を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
測定手法の変更に伴い、使用予定であったビオチン化DNAの購入を見送ったため。
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次年度使用額の使用計画 |
測定手法が確立され次第、新たに設計したDNAの購入費用として順次使用する。
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