研究課題
本研究では、ガン診断(PET)しながらがん治療(PDT)を行うことのできるセラノスティクスの創成とその薬剤開発に取り組んでいる。本研究では、セラノスティクス候補薬剤の合成を行い、担癌マウスを用いた体内動態評価を行った。(合成)フッ素ポルフィリンに腫瘍集積性置換基と腫瘍集積時間促進置換基の2種類を導入したポルフィリン誘導体を出発原料に用いた。実験は、ポルフィリン誘導体溶液(c = 179 microM)に半減期の長い(t1/2= 244 day)RI核種65Zn2+の酢酸溶液(約5 MBq)を加熱反応させたのち、溶媒留去することで[65Zn]-ポルフィリン誘導体を得た。(体内動態評価) ラット胃ガン様変異株(RGK-36)を左後肢に移植したヌードマウス(BALB/cSLC-nu/nu)に、[65Zn]-ポルフィリン誘導体溶液(in EtOH:PEG4000:water = 2:3:5)を100 microLを尾静脈投与した(c= 7 microM, 65Zn: 0.21 MBq (1匹あたり))。薬剤投与1、6、12、24時間後にマウスの血液および下記の臓器を摘出し、摘出臓器中の65Zn量を求めた。[65Zn]-ポルフィリン誘導体を用いた体内動態の結果、腫瘍と消化器系臓器(肝臓、腎臓、脾臓)との集積率の差は、2倍から同程度の値を示した。また消化器系臓器だけでなく、血液中の[65Zn]-ポルフィリン誘導体量が少ないことから、今回合成した[65Zn]-ポルフィリン誘導体は腫瘍集積性促進置換基を導入することで、クリアランスを促進することができた。
2: おおむね順調に進展している
今回合成したセラノスティクス候補薬剤であるポルフィリン誘導体は、クリアランスが速く、また腫瘍集積性が高い結果が得られ、がん診断薬としては有望である。今後は、同位体元素であるZnを導入したポルフィリン誘導体の合成と、がん治療薬としての性能を調べていく予定であることから、研究はおおむね順調に進んでいると考えている。
今後は、同位体元素であるZnを導入したポルフィリン誘導体の合成と、がん治療薬としての性能をin vitro及びin vivoでのPDT試験を行う。PDT薬剤としても有用性が確認できた後、in vivoでのセラノスティクスの実験を行い、がん診断と治療が同時に行うことができるセラノスティクスを確立する。
すべて 2015 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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