研究実績の概要 |
本研究では、がん診断(PET)とがん治療(PDT)が同時に行うことができるセラノスティクスの創成を目指している。一昨年度に開発した、2つの置換基(グルコース(Glc)鎖とメルカプトエタノール(mEt)鎖)を2分子ずつ導入したポルフィリン(TFPP)に放射核種65Znを導入した化合物[65Zn]-TFPP(mEt)2(SGlc)2は、胃ガン(RGK)細胞を移植した担癌マウスを用いた動態試験において、速い腫瘍集積時間と高い腫瘍集積性を示し、がん診断薬としての有用性が示された。 そこで昨年度はがん治療薬の開発として、[65Zn]-TFPP(mEt)2(SGlc)2のZnを安定同位体に変更したZnTFPP(mEt)2(SGlc)2を合成し、がん治療薬としての性能を調べた。 合成したZnTFPP(mEt)2(SGlc)2について、様々ながん細胞株(HeLa、ラット胃ガン様変異株(RGK)、脳腫瘍株(U87, T98G))を用い光細胞毒性試験を行い、PDT用薬剤としての性能を調べた。また、比較物質として市販PDT薬剤であるレザフィリンについても同様の試験を行った。96穴プレートに細胞株(HeLa、RGK-1、U87およびT98G)を5000 cells/ well播種し、37度、5%CO2条件下で8時間培養した。次に、プレートの各穴に所定濃度(5-0.1 microM)の薬剤溶液(1% DMSO/10% FCS/medium)を添加し8時間接触させた後、ハロゲンランプ(100 W, λ> 500 nm)の光を光量16 J/cm2で照射し、照射24時間後、WST-8アッセイにより細胞生存率を求めた。 その結果、どの細胞株においてもZnTFPP(mEt)2(SGlc)2(EC50< 2.5 microM)が、レザフィリン(EC50> 5.0 microM)よりも高い光細胞毒性効果を示され、ZnTFPP(mEt)2(SGlc)2はがん治療薬としても優れていることが示された。 本研究で開発したTFPP(mEt)2(SGlc)2亜鉛錯体は、セラノスティクス薬剤として期待できる。
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