研究課題/領域番号 |
26410192
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
伊藤 恵啓 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (70151553)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 廃水処理 / 分解性界面活性剤 / 染料 / 加水分解 / イオン性基質 / 溶媒抽出 / 吸着剤 / 凝集剤 |
研究実績の概要 |
廃水処理工程や製造過程での水処理工程の高効率化と環境負荷の低減が望まれている。そこで本研究では、温和な条件下で分解可能な加水分解性界面活性剤に着目し、有害あるいは有用イオン性物質の分離回収システムの構築を目指した。 1.ベタインエステル基を有するカチオン性ジェミニ型界面活性剤及び両性イオン型界面活性剤を新規に合成し、その界面活性能等を調べた。 2.上記ジェミニ型界面活性剤を溶媒抽出剤として用いてイオン性染料・基質の溶媒抽出を検討した結果、アニオン性染料のメチルオレンジを非ハロゲン系有機溶媒に抽出後弱アルカリ水溶液(pH ~12)に逆抽出することで定量的に分離回収できることがわかった。また、有機溶媒は5回まで回収率を低下させずに再利用可能であった。 3.カーボンブラック粒子を加水分解性界面活性剤(1本鎖型活性剤)で改質した凝集剤を調整し、凝集剤添加による水溶液からのメチルオレンジの凝集沈殿、活性剤の加水分解による沈殿物からのメチルオレンジの脱着(回収)が容易に起こることを明らかにした。 4.両性イオン型界面活性剤は、カチオン性界面活性剤に比べて加水分解性は低いものの、活性剤水溶液はアニオン性化合物共存下でも安定に存在した。そこで、ラテックス凝集剤の開発を目的として、乳化重合用乳化剤としての適用を検討した。その結果、安定なラテックスを形成すると共に加水分解により容易に凝集沈殿することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
合成した界面活性剤の溶解性が不良で使用できる化合物が限定された:合成したジェミニ型界面活性剤溶液が抽出時に乳化してしまい有機相と水相を分離できない場合が多く見られた。合成した両性イオン型界面活性剤の水への溶解性が悪く(クラフト点が高く)、界面活性能が低い短鎖化合物のみ室温で利用可能であった。 建物の耐震改修により数ヶ月実験室、測定機器が使用できず、系統的な実験が出来なかった。その結果、学会発表等の成果発表は1件のみであった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでは、結果の分析を優先するために単独の界面活性剤(主に直鎖アルキル基からなる化合物)を用いて検討して来たが、今後は、混合物あるいは分枝状アルキル化合物を用いて溶解性等の問題を改善する。 提案した3つの課題について、予備実験により原理的にシステム構築は可能であることは確かめており、今後研究計画に従って実験を遂行する。
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