研究課題/領域番号 |
26410194
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
吉村 倫一 奈良女子大学, 自然科学系, 教授 (10339111)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 非イオン性界面活性剤 / 環境負荷低減 / ポリオキシエチレン / 単一鎖長 / 表面張力 / 臨界ミセル濃度 / ミセル / X線小角散乱 |
研究実績の概要 |
非イオン性界面活性剤は、親水基がエチレンオキシド(CH2CH2O)のポリエチレングリコール型がほとんどであり、乳化、洗浄、浸透など種々の機能を有することから、トイレタリーや化粧品など各種工業製品に使われている。しかし、合成で使用されるエチレンオキシド(酸化エチレン)は、人体に対して毒性が強く、眼や上気道の粘膜刺激が強烈で発ガン性物質であることが最近指摘されている。環境に対する排出抑制対策も問題であり、一部の外国ではエチレンオキシドの使用を制限する動きも見られ、エチレンオキシドから作られるポリエチレングリコール型非イオン性界面活性剤の見直しは今後重要な課題である。本研究では、出発原料にエチレンオキシドを用いたポリエチレングリコール型の非イオン性汎用界面活性剤に替わる新しい非イオン性界面活性剤の開発を行うことを目的としている。平成27年度は次の研究を実施した。 (1)ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール系単鎖型非イオン性界面活性剤の合成 任意の重合度をもち、分布をもたないポリエチレングリコールのナトリウム塩と臭化アルキルを反応させ、さらに、このポリエチレングリコールアルキルエーテルの臭化物とポリプロピレングリコールのナトリウム塩を作用させて、ポリプロピレンポリエチレングリコールアルキルエーテル(CnPOxEOy)を合成した。同様に、ポリエチレングリコールのナトリウム塩と臭化アルキルから、ポリエチレングリコールアルキルエーテル(CnEOy)を合成した。 (2)界面化学的性質の評価 合成した非イオン性界面活性剤の界面化学的性質を、静的および動的表面張力と界面粘弾性の測定により調べ、気/液界面での吸着・配向性について検討した。また、水溶液中で形成する会合体のナノ構造を、動的光散乱、蛍光、低温透過型電子顕微鏡、X線小角散乱により調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
単一鎖長のポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール系単鎖型非イオン性界面活性剤は、収率にやや課題が残されているものの、精製法が確立し高純度で目的物を得ることができた。アルキル鎖長は10、12、14、16、ポリオキシエチレン鎖長は4、6、8、ポリオキシプロピレン鎖長は1、2、3の目的物を合成できた。合成したこれらの非イオン性界面活性剤の界面化学的性質および水溶液中での会合体特性に関して、静的表面張力、動的表面張力、界面粘弾性、動的光散乱、蛍光、低温透過型電子顕微鏡、X線小角散乱の測定はすでに終わっており、界面活性剤の構造と物性との関係や水中で形成するミセルのナノ構造との関係について明らかにした。また、動的表面張力の測定により、バルク中からサブ表面への拡散ならびにサブ表面から気-液界面への吸着について調べ、界面活性剤の構造と拡散係数との関係について明らかにした。さらに、水晶発振子を用いたステアリン酸汚れモデルによる洗浄評価や油にスクワランを用いた乳化特性についての検討も行った。 以上の研究成果から、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
単一鎖長のポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール系単鎖型非イオン性界面活性剤とポリエチレングリコール系単鎖型非イオン性界面活性剤の水溶液中での会合体のナノ構造について、X線小角散乱(SAXS)の測定により、散乱プロファイル(散乱ベクトルと散乱強度の関係)を得るところまではすでに終えており、ギニエ解析を行っただけである。今後は詳細なナノ構造を追跡するために、散乱プロファイルよりフィッティングを含めたモデル解析を行い、会合体の形状やサイズについて明らかにする。また、SAXSより得られた結果について、すでに実施済みの動的光散乱や低温透過型電子顕微鏡、粘度の結果と比べて検討し、考察を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
ガラス器具などの消耗品の調達方法の工夫などにより、当初計画より経費の節約ができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に消耗品(ビーカー)の購入に充てたい。
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