非イオン性界面活性剤は、親水基がエチレンオキシド(CH2CH2O)のポリエチレングリコール型がほとんどであり、乳化、洗浄、浸透など種々の機能を有することから、トイレタリーや化粧品など各種工業製品に使われている。しかし、合成で使用されるエチレンオキシド(酸化エチレン)は、人体に対して毒性が強く、眼や上気道の粘膜刺激が強烈で発ガン性物質であることが最近指摘されている。環境に対する排出抑制対策も問題であり、一部の外国ではエチレンオキシドの使用を制限する動きも見られ、エチレンオキシドから作られるポリエチレングリコール型非イオン性界面活性剤の見直しは今後重要な課題である。本申請では、出発原料にエチレンオキシドを用いたポリエチレングリコール型の非イオン性汎用界面活性剤に替わる新しい非イオン性界面活性剤の開発を行った。 合成した新規非イオン性界面活性剤の界面化学的性質を、静的および動的表面張力と界面粘弾性の測定により調べ、気/液界面での吸着・配向性について検討した。また、水溶液中で形成する会合体のナノ構造を、動的光散乱、蛍光、低温透過型電子顕微鏡、X線小角散乱(兵庫県佐用郡のSPring-8を利用)により調べた。SAXSの測定は、大型放射光施設SPring-8に設置のX線小角散乱装置(ビームラインBL40B2)を用いて行い、集合体のナノ構造の解析を行った。洗浄や塗料、化粧品分野などの工業的展開を図るには、新規界面活性剤の界面吸着および会合体形成の特徴を把握する必要があり、高い界面活性を得るためにアルキル鎖長、ポリグリセリンまたはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールの重合度および分布の制御を試みた。
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