研究実績の概要 |
今年度は塩素化プロピルパラベンの代謝物で、機器分析により3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシ安息香酸2-ヒドロキシ-1-メチルエチルと推測される物質の標品合成を試みた。テトラヒドロフラン中、トリフェニルホスフィンおよびアゾジカルボン酸ジエチル存在下、3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシ安息香酸とプロピレングリコールを室温にて反応させた。生成物は分取薄層クロマトグラフィー上でクロロホルム/メタノール(85/15, v/v)で展開させた4番目の画分を回収、濃縮した。核磁気共鳴分光法と精密質量分析から目的物質であることを確認した(収率51%)。ガスクロマトグラフ-質量分析計による代謝物および合成標品の保持時間とマススペクトルは一致したため、代謝物の同定に成功した。肝S9フラクションによる塩素化パラベンから当該物質への代謝変換率は、同定した代謝物6物質中2番目に高い32%であった。 また、当該物質の毒性に関して、YCM3酵母レポータージーンアッセイを実施したところ、ヒト芳香族炭化水素受容体への結合活性は認められなかった。これは活性物質である塩素化プロピルパラベンと比較して、エステル側鎖の嵩高い官能基の導入により芳香環との干渉が大きくなり、分子の平面性が低下したことによると考えられる。 次年度は水生生物および実験室での暴露試験も含めた塩素化パラベンとそれら代謝物の蓄積性・代謝メカニズムの解析を実施する予定である。
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