研究実績の概要 |
今年度は塩素化パラベンの生物蓄積性に関する知見を得るため、河川で捕獲した魚類試料、河川でのゲージ曝露法による巻貝試料および実験室で曝露した巻貝試料について、濃度計測に取り組んだ。 前年度に確立した分析法により、下水放流域の河川から捕獲したメダカ(n=39)およびトビケラ(Trichoptera、n=3)を計測したところ、塩素化体3物質、非塩素化体1物質を検出し、濃度レベルは最大で0.62(ng/g・湿重量)であった。また、同河川に7日間ゲージ法により曝露したヒメタニシ(Sinotaia quadrata histrica, n=10)を計測したところ、塩素化パラベン9物質および非塩素化パラベン4物質を検出した。濃度レベルは最大で19 (ng/g・湿重量)であった。下水放流口の上流域で同一条件のもと曝露したヒメタニシ試料からは、塩素化体3物質および非塩素化体1物質を検出し、濃度レベルは最大で1.1(ng/g・湿重量)であった。この結果は水生生物試料から検出した塩素化パラベンの発生源として、下水処理場の寄与が大きいことを示している。塩素化体の濃度は河川水中の存在量および生物試料重量との相関が認められた(R2=0.33~0.77)。さらに実験室において二塩素化メチルパラベン水溶液中で7日間曝露したヒメタニシ(n=10)を計測したところ、水溶液中の二塩素化メチルパラベン濃度は時間とともに低下する一方、曝露後のすべてのヒメタニシからに二塩素化メチルパラベンを検出した。 これらの結果は、河川における塩素化パラベンの生物蓄積性を示唆するものである。
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