研究課題/領域番号 |
26410196
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
谷本 智史 滋賀県立大学, 工学部, 准教授 (50303350)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ペプチド / 金属イオン / 貴金属 / レアメタル / 選択捕集 / 吸着 / カラム |
研究実績の概要 |
平成26年度はじめに提出した研究実施計画では「平成27年度は実用化を意識して脱着実験を中心に実施する」としていた。 塩基性ペプチドであるポリリジンと酸性ペプチドであるポリグルタミン酸とのそれぞれを固定化したペプチド修飾シリカ粒子を調製して、吸着実験に用いた。粒子調製手順はこれまで報告したとおりである。細径ガラスフィルターを簡易カラムとして、ペプチド修飾粒子を充てんし、金属イオン水溶液を流し、イオンの濃度変化を評価することで吸着量を求めた。金属イオンとしては、金、白金、パラジウムを選んで用いた。 上記の吸着実験を行った後のカラムに対して吸着金属イオンの脱着実験を行った。金属イオンの脱着は、吸着後のカラムに塩酸を通過させることで行った。その結果、一旦カラムに吸着された金属イオンが塩酸によって、脱着され、塩酸溶液として回収できることがわかった。脱着の効率は粒子に固定化したペプチドの種類によって異なった。ポリグルタミン酸の系では、金に対して約5割、パラジウムに関して約6割の脱着効率であった。ポリリジンの系では、それぞれ、金で約3割、パラジウムで約6割であった。効率には大小があるが、どちらのペプチド修飾シリカ粒子も金イオン、パラジウムイオンに対して吸脱着が可能な捕集材料として利用できることが明らかとなった。 また、白金イオンに関しては、ポリグルタミン酸の系において、9割という高効率で脱着が可能であることが明らかとなった。このことはポリグルタミン酸修飾シリカ粒子が白金イオンの分離回収材料として適していることを示唆している。 脱着条件に関しては更なる検討が必要であるが、現時点で、昨年度の実施報告で提示した研究計画が予定通り実施できたといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
検討を予定していた実験はほぼ実施できたと考える。予定していたペプチド修飾シリカ粒子による貴金属イオン吸着実験と、そこからの脱着実験を実施できたためである。しかし、脱着条件の最適化ができていないため、脱着効率は十分ではなかった。用いる塩酸の濃度をパラメータとして追加検討したい。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は捕集した貴金属イオンの脱着挙動の追加検討を行う。さらにこれまで得られた知見から、捕集メカニズムがペプチド種と貴金属イオン種によって異なる可能性も示唆されているため、二種のペプチド修飾シリカ粒子を混合して用いることで結果が変わる可能性を評価したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本テーマで使用する試薬類、合成器具の多くが以前より使用していた物であり、その継続利用ができたため、消耗品類の購入が予定より抑えられた。
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次年度使用額の使用計画 |
大容量の合成を今年度は実施する予定である。そのため大型の攪拌装置の追加購入を計画している。
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