平成27年度までは、塩基性ペプチドであるポリリジンと酸性ペプチドであるポリグルタミン酸のそれぞれを固定化したペプチド修飾シリカ粒子を単独で用いて、貴金属イオンの吸着実験を行ってきた。粒子の調製は、これまでの報告と同様の手順であった。細径ガラスフィルターを簡易カラムとして、作製したペプチド修飾粒子を充てんし、金属イオン水溶液を流し、前後でのイオンの濃度変化を評価することで吸着量を求めた。金属イオンとしては、金、白金、パラジウムを用いた。その結果を踏まえて、平成28年度には「これまで用いた二種のペプチド修飾シリカ粒子の混合使用」を検討予定としていた。 まず、二種の粒子の等量混合充填カラムをこれまでと同様の手順で用意し、金とパラジウムの単独溶液からの吸着実験を行った。混合充填カラムの両方の金属イオンに対する吸着量は、ポリリジン修飾シリカ粒子のみで行った系での吸着量の半分以下であり、ポリグルタミン酸修飾シリカ粒子のみで行った系での吸着量とほぼ同じであった。これは各粒子の吸着速度が異なることに由来するとわかった。 次に両方のイオンの混合溶液からの吸着実験を行ったところ、パラジウムイオンの吸着は溶液中に共存する金イオンの影響を受けず、パラジウムの単独溶液での吸着と同じ量を捕集できた。一方、金イオンの捕集は優先して吸着したパラジウムによって阻害されるということがわかった。 また、混合充填カラムからの両金属イオンの脱着実験を行ったところ、どちらの金属イオンにおいても、脱着が阻害されることはなかった。 研究期間全体の結果より、ペプチド修飾シリカ粒子をカラム充填剤として用いることの、貴金属イオン選択回収プロセスへの応用の可能性が明らかとなった。
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