高速で高窒素選択的に硝酸イオン排水を処理する高機能触媒の開発および反応機構の解明に関して今年度は主に以下の事柄が明らかとなった。 (1) 硝酸イオン吸着能の高い物質(カルシウム処理した木質炭化物、陰イオン交換樹脂、ハイドロタルサイト)を担体に用いたPd-In触媒について比較したところ、陰イオン交換樹脂が最も硝酸イオン吸着量が多く、硝酸イオン分解活性が高かったが、生成を低く抑えたいアンモニウムイオン選択率は木質炭化物が最も低かった。また、反応溶液における共存イオンの影響について調べたところ、硫酸イオンやリン酸イオン共存時の活性低下は、木質炭化物を用いた場合が最も抑えられることが明らかとなった。 (2) 活性種の状態が生成物の選択性に与える影響について検討を行った。活性種の担持量を同じにし、担体をTiO2、Al2O3、SiO2、活性炭として比較した。活性は、Al2O3を用いた場合が最も高く、次いでTiO2、SiO2、活性炭の順であった。また、生成物の選択率は担体種によって大きく異なり、最も高い窒素選択率が得られたのはAl2O3担体の場合であった。また、TiO2やSiO2担体ではアンモニウムイオンの生成が少なかった。これらの選択率の違いは、Pd粒子の大きさが反映されていることを示す結果が得られた。 (3) 反応の機構の解明に関する検討として、硝酸イオン還元の中間生成物と推測される亜硝酸イオンを出発物質として反応を行い、その分解挙動を調べた。その結果、触媒共存・非共存によらず、亜硝酸イオンはギ酸との混合により自己酸化還元が進行することが明らかになった。また、亜硝酸イオンが共存している状況では、Pd-In触媒上でのギ酸による硝酸イオンの還元反応は著しく阻害された。硝酸イオンが還元されて生じた亜硝酸イオンは触媒から溶液中に脱離せず、触媒上で逐次的に還元が進行すると推測された。
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