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2015 年度 実施状況報告書

高効率触媒反応を利用した非可食性バイオマスからのバイオベースアクリル樹脂合成

研究課題

研究課題/領域番号 26410199
研究機関国立研究開発法人理化学研究所

研究代表者

竹中 康将  国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 研究員 (40392021)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード非可食性バイオマス / バイオベースポリマー
研究実績の概要

本研究は、(1)高効率触媒反応を利用した非可食性バイオマスから有用なオレフィン系モノマーを高選択的に合成する技術開発を行い、(2)得られるバイオマス由来のオレフィン系モノマーを精密に重合する新規触媒を開拓し、バイオマス度の高い新規バイオベースポリマーを合成する技術の確立を目的としている。平成27年度は、(1)非可食性バイオマスを原料に用いたバイオベースアクリル酸エステルの合成および、(2)β位に置換基を有するアクリル酸誘導体の高立体選択的な重合触媒の開発を検討した。また、新たに(3)リグニンから高効率で桂皮酸誘導体を合成するための触媒群の探索を開始した。
(1)非可食性バイオマスを原料に用いたバイオベースアクリル酸エステルの合成は、バイオ生産されたポリヒドロキシブタン酸を金属触媒による熱分解反応で、バイオベースクロトン酸を合成した後、植物由来のアルコールを用いてエステル体へと変換することにより、バイオベースクロトン酸エステルの合成を行った。得られたバイオベースクロトン酸エステルを重合し、バイオマス度の高いバイオベースアクリル樹脂を合成した。
また、(2)β位に置換基を有するアクリル酸誘導体の高立体選択的な重合触媒の開発においては、バイオポリエステルから合成可能なβ位にメチル基、プロピル基を有するアクリル酸誘導体であるクロトン酸エステル及びtrans-2-ヘキセン酸エステルをモノマーとし、有機酸を触媒として用いる重合法を検討した。クロトン酸エステルは、酸触媒を用いる事によって、リビング的に重合が進行する事を見出し、定量的に目的のポリマーを与えるとともに数平均分子量にして5万以上の高分子量体を合成する事に成功した。また、β位に芳香環置換基を有する桂皮酸誘導体へと基質の拡大を行い、重量平均分子量にして3万の高分子量体を高収率で得る事に成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

平成27年度は、(1)非可食性バイオマスを原料に用いたバイオベースアクリル酸誘導体の合成、(2)β位に置換基を有するアクリル酸誘導体の高立体選択的な重合触媒の探索、および(3)リグニンから高効率で桂皮酸誘導体を合成するための触媒群の探索を行った。
(1)非可食性バイオマスを原料に用いたバイオベースアクリル酸誘導体の合成は、バイオ生産されたポリヒドロキシブタン酸から2段階の反応を経て、バイオベースアクリル樹脂の原料となるバイオベースクロトン酸エステルの合成を達成した。得られたバイオベースクロトン酸エステルを昨年度開発した重合手法を用いて高分子量体へと変換し、バイオマス度の高いバイオベースアクリル樹脂を高収率で得る事に成功した。
(2)β位に置換基を有するアクリル酸誘導体の高立体選択的な重合触媒の開発では、バイオポリエステルなどの非可食性バイオマスから合成可能なクロトン酸エステル及びtrans-2-ヘキセン酸エステル、リグニン誘導体として知られている桂皮酸エステルなどをモノマーとし、有機酸を触媒として用いる重合法を検討した。クロトン酸エステルは、酸触媒を用いる事によって、リビング的に重合が進行する事を見出し、定量的に目的のポリマーを与えるとともに数平均分子量にして5万以上の高分子量体を合成する事に成功した。また、trans-2-ヘキセン酸エステルについても重合が進行する事を確認し、桂皮酸エステルにおいても重量平均分子量にして3万の高分子量体を高収率で得る事に成功した。
(3)リグニンから高効率で桂皮酸誘導体を合成するための触媒群の探索について酸触媒を用いた分解方法を検討した。
研究全体の進捗状況は、得られたバイオベースアクリル樹脂の物性評価について十分な評価が行えていないため、研究の進捗はやや遅れていると判断した。

今後の研究の推進方策

(1)非可食性バイオマスを原料に用いたバイオベースアクリル酸誘導体の合成については、様々なバイオマス原料を用いて置換基の異なる新規なバイオベースアクリル酸誘導体の合成を検討する。セルロースなどの非可食性バイオマスを用い、様々な置換基を持つアクリル酸誘導体を高効率で合成する手法を探索する。得られたバイオベースアクリル酸誘導体については、バイオマス度の測定を行う。
(2)β位に置換基を有するアクリル酸誘導体の重合については、重合活性の低かったβ位にメチル基以外のアルキル基を持つ化合物、trans-2-ヘキセン酸誘導体などについて、高収率でポリマーが得られる条件の最適化を行う。得られたバイオベースアクリル樹脂およびポリ桂皮酸誘導体については、フィルムや様々な形の成形品を作製し、材料としての強度や耐久性の評価を行う。平成27年度までの知見により、本研究で合成したポリマーは、透明性の高いフィルムに加工することが可能である事、同様の構造を有するアクリル樹脂であるポリアクリル酸エステルよりも熱安定性が高い事が明らかになっており、物性面での期待も高い。そこで、バイオマス度の高いバイオベースアクリル樹脂について、一般的な高分子材料の評価方法を含め、屈折率、透過率、フェーズ測定などを行い、材料としての特性評価を行う。
さらに、平成28年度は平成27年度に開始した(3)リグニンから高効率で桂皮酸誘導体を合成するための触媒群の探索を継続して行い、効率良く桂皮酸誘導体を得る条件を見出す。さらに、これらの知見を植物へとフィードバックすることで、効率よく桂皮酸誘導体へ変換可能な構造を多く持つリグニンで構成された植物群の特定も行っていく。

次年度使用額が生じた理由

平成27年度の物品費として、合成に用いる高価な遷移金属試薬類の購入を予定していたが、研究の進捗がやや遅れており、遷移金属試薬を用いる実験を精力的に行える段階まで進まなかったため、当該年度の遷移金属試薬の購入を見送った。そのため、次年度使用額が生じた。

次年度使用額の使用計画

(1)非可食性バイオマスを原料に用いたバイオベースアクリル酸誘導体の合成手法の確立および(2)β位に置換基を有するアクリル酸誘導体の高立体選択的な重合触媒の開発については、平成27年度と同様に、試薬、溶媒などの消耗品類の購入を予定している。(3)リグニンから高効率で桂皮酸誘導体を合成するための触媒群の探索については、既存の金属圧力容器を用いるため、必要となる部品、試薬、溶媒などの消耗品類の購入を検討している。また、遷移金属系の触媒を用いる事も計画しているため、遷移金属試薬類の購入を予定している。また、成果発信として国内および海外での学会発表を行う予定にしており、その旅費として支出する。さらに、論文発表などの成果発信に必要な費用として支出する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2105 2015

すべて 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)

  • [学会発表] 非可食性バイオマス由来のモノマーを原料とするバイオベースアクリル樹脂の合成と物性2105

    • 著者名/発表者名
      竹中康将、阿部英喜
    • 学会等名
      第64回高分子学会年次大会
    • 発表場所
      札幌コンベンションセンター
    • 年月日
      2105-05-28
  • [学会発表] Preparation and Characterization of Bio-based Poly(crotonate)s form the Non-edible Biomass2015

    • 著者名/発表者名
      竹中康将、阿部英喜
    • 学会等名
      Pacifichem2015
    • 発表場所
      Honolulu, Hawaii, USA
    • 年月日
      2015-12-17
    • 国際学会
  • [学会発表] バイオマスから誘導可能なα,β-不飽和カルボン酸エステルを原料とするバイオベースアクリル樹脂の合成と物性2015

    • 著者名/発表者名
      竹中康将、阿部英喜
    • 学会等名
      第64回高分子討論会
    • 発表場所
      東北大学
    • 年月日
      2015-09-15
  • [学会発表] Development of Bio-based Acrylic Resins from the Non-edible Biomass2015

    • 著者名/発表者名
      竹中康将、阿部英喜
    • 学会等名
      The 5th International Conference on Bio-based Polymers (ICBP2015)
    • 発表場所
      Singapore
    • 年月日
      2015-06-26
    • 国際学会

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公開日: 2017-01-06  

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