導電性高分子であるポリ3,4ー(エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)/硫酸化糖ポリマーを調製して、熱線吸収材への検討を行なった。硫酸化糖ポリマーは、分子量が28000~760000の5種類のものを用いて分子量の影響についても検討した。既存のPEDOT/PSS分散溶液および調製したPEDOT/硫酸化糖ポリマー分散溶液の粒子径を動的光散乱(DLS)により測定した。PEDOT/硫酸化糖ポリマーの平均粒径は、最小で260 nm、最大で390 nmであり、硫酸化糖ポリマーの分子量との相関性は見られなかった。PEDOT/PSSの平均粒径は330 nmであるため、PEDOT/硫酸化糖ポリマー分散溶液もPEDOT/PSSと同様に分散性が高いことを確認した。ガラス基板を用いたスピンコート法により、膜厚がおよそ100 nmのPEDOT/PSSおよびPEDOT/硫酸化糖ポリマーの薄膜を作製して、導電率および透過率の測定を行なった。導電率は、既存のPEDOT/PSSと比較して低くなったものの、硫酸化糖ポリマーの分子量が小さいほど、導電率は高くなる傾向があることを確認した。PEDOT/硫酸化糖ポリマーの透過率の測定では、導電率が高い程、赤外線の領域において透過率が減少し、熱線吸収能が高くなる傾向を示した。硫酸化糖ポリマー中のスルホン酸基量の影響を検討するため、スルホン酸基量を2倍に増やした硫酸化糖ポリマーを調製して、PEDOT/硫酸化糖ポリマー薄膜を作製した。スルホン酸基量を2倍にした場合、導電率は5倍向上して、それに伴い赤外領域での透過率も低くなり、熱線吸収能は増加することを確認した。以上の結果から、分子量が28000と比較的小さく、スルホン酸基含有量が多い硫酸化糖ポリマーを用いてPEDOTを複合化することにより、PEDOTの共役系が伸びることに伴い、熱線吸収能力が向上したことが考えられる。
|