研究実績の概要 |
水を媒質とする、両極に光触媒を用いる太陽電池(光燃料電池)は、単セルで光触媒のバンドギャップ相当の起電力が得られる。この理論起電力からの過電圧を詳細に調べた。光触媒側から光照射すると表面反応数で有利だが、反応点から電極までの電荷拡散過電圧(0.23-0.41 V)が見積もられた。この点で、光電極への背面照射が高起電力を得るのに有利だった。一方、負極からの励起電子が正極の電子トラップサイト(酸素欠陥や金属ナノ粒子)に直接移行してしまうリーク電流が、特に正極を正面照射としたときに認められた。BiOCl等のp型半導体光触媒を正極用に選び、正極を背面照射とすることで、正極の価電子帯に残るホールがバンドの曲がりにより電極近くに移動し、負極から移行した励起電子と有効に結合し、リーク電流を抑制した。以上より、開放電圧1.91 V、セル出力55.8 μW(セル面積は1.3 cm**2)を実現した。
0.1-0.8 MPaでの高圧CO2光燃料化では、Pd/TiO2が最も高活性だが、CO2+H2で反応させた場合には、CO2圧0.12 MPa, H2圧0.28 MPaで活性は極大(主生成物はメタン)となるのに対し、CO2+moistureで反応させた場合には、0.8 MPaに至るまでラングミュア型の速度依存性を示し、メタン生成の反応次数は0.39だった。前者ではPd上のCO2吸着をHが阻害するのに対し、後者では光照射下で酸素欠陥サイトがTiO2に生じていることがTi K EXAFSおよびFTIRにより示された。水が酸化チタン表面でホール酸化される際に酸素欠陥が生じたと考えられた。すなわち、水の酸化サイト(TiO2)とCO2の還元サイト(Pd)とが有効に分離されたため、Pd/TiO2および半導体ベースの光触媒一般でCO2+moistureでの反応速度がCO2+H2での反応速度より速くなったといえる。
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