研究課題/領域番号 |
26410205
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
吉本 信子 山口大学, 理工学研究科, 准教授 (30253173)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 希土類金属 / 電析 / 有機溶媒 |
研究実績の概要 |
希土類金属は標準電極電位が水素発生電位より卑であるため,水溶液からの電析は困難である。したがって,有機電解質を用いた電解浴からの電析を行う必要がある。そこで,アルミニウム薄膜電析の電解浴として使用されているジメチルスルホンを使用した電解液を採り上げ,2種類のネオジム(Nd)塩を含むジメチルスルホン電解液中でのNdの電気化学挙動をサイクリックボルタンメトリー(CV),リニアスイープボルタンメトリー(LSV)などにより調査した。電気化学測定の結果より,ネオジム塩には塩化ネオジム(NdCl3)が適していることがわかった。さらに,電気化学測定によりNdが析出する電位を確認し,定電位を印加して電析を行い,得られた析出物をSEMで観察した。元素の分布状態をEDXにて調査する予定であったが,装置の故障などの関係で当該年度の調査は断念した。代わりに,大学に新しく導入されたXPS装置を利用して析出したNdの酸化状態を調査したところ,ほとんど酸化物になっていることがわかった。この理由は,溶媒として用いたジメチルスルホンが溶解する溶媒が水である事,さらに室温では固体であるため,電析後に電解液を取り除くために温水を用いたことが原因であると考察した。 当該年度に測定予定であったNdイオンの解離状態や錯体構造は,ラマン装置の室温以上での測定セルの納入に時間がかかったため,次年度に持ち越すこととした。 Nd金属が酸化溶解する電解質系の探索については,予備実験の結果,測定セルや測定時間など現時点では困難であると判断した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
これまで予備実験として行っていた電気化学測定の再現性がとれなくなったことに加えて,当該年度に予定していたラマン測定,EDX測定の装置が他の研究室や大学の分析センター管理の装置で,装置が壊れていて測定できなかったことが大きな理由である。さらに,本研究に関わる測定用のセルを科研費で発注したが,その納入に時間がかかったことも進捗が遅くなった要因である。 さらに,Nd金属の酸化溶解調査に関しては,板状のNd金属の入手が困難であり,セルの設計を当初の物から大幅に変更する必要がある事を確認したので,Nd金属が酸化溶解する電解質系の探索については断念せざるを得ないと言う結果になったためである。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の研究実績の概要に述べたように,陽極でのNdの酸化溶解,あるいはNd-Fe-B磁石の酸化溶解の調査は本研究課題の研究計画から外すことを検討している。負極(陰極)での希土類金属の電析が可能な電解液系の最適化を最優先に検討する予定である。すなわち,現在使用している溶媒は室温で固体であるため,110℃程度の温度で電析する必要があり,エネルギー的にも問題があるので,室温付近で電析可能な溶媒の探索を中心に行う予定にしている。 さらに,析出物が酸化物として得られる場合には,それを利用して,Y2O3-Eu3+のような蛍光材料を薄膜として得ることのできる電解質系にシフトすることも考えに入れている。
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