研究課題/領域番号 |
26410207
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
高瀬 聡子 九州工業大学, 大学院工学研究院, 助教 (60239275)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 燃料電池 / カソード触媒 / 白金代替触媒 / 金属錯体 |
研究実績の概要 |
本研究は、酸素還元触媒活性をもつ金属フタロシアニン分子が自己形成する積層構造を検討し触媒層の導電性を向上させ、高導電性の触媒のみで構築された電極を作製することを最終目的としている。特にドナーである金属フタロシアニンとアクセプター化学種が分離積層体を形成すると導電性が飛躍的に向上することに着目している。 そこで平成26年度は積層構造体の作製法の検討を湿式法を中心に行った。金属フタロシアニンは疎水性で、また多くの有機溶媒にも難溶性である。そこで、有機強酸溶液中でプロトン化して単分子分散状態とした溶液を水溶液に接触させることでプロトン脱離を起こさせ積層構造体を界面で析出させ、それと同時に水溶液に分散させたヨウ素などのアクセプターイオンを積層構造体に組み込み、高導電性の分離積層体を形成することを試みた。その結果、中心金属がコバルトとニッケルのもので目的の構造が得られたことをX線回折分析によって確認した。これらの積層体は、真空蒸着法によって得られていたものであるが、本方法によって容易に合成できることが分かった。本方法で得られる積層体は、単分子分散状態から形成される積層体として熱力学的に安定なものが優先的に形成されると考えた。鉄フタロシアニンでは異なる積層構造体が得られており、積層体種の安定性は中心金属に依存していると考察した。一方、異種中心金属の金属フタロシアニン積層体の形成も試みたが、X線回折では構造決定が行えなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は触媒合成法を検討する計画であった。湿式法による分離積層構造体の作製が複数の金属フタロシアニン種で確立できたために、順調だと考えている。有機/無機界面で得られる積層体種に中心金属種が影響することが分かり、中心金属種に依存した積層体の安定性を理解する情報が得られた。計画に挙げていた異種金属フタロシアニンの積層体制御は成功しなかった。金属フタロシアニン種の選択が検討課題であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度で得られた分離積層構造を持つ金属フタロシアニン系触媒の酸素還元特性を回転電極を用いて行い、反応機構解析を行う。また、触媒層の電導性の評価、電極担持法の検討を平成27年度に行う。それらを元に平成28年度では、燃料電池セルを作製し発電特性と発電時のセル内インピーダンス解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に購入を計画していた試薬が予想外に安価に済んだために、試薬代が余剰した。また、アメリカ電気化学会の学会に参加を予定していたが、論文作成を優先したために今回は発表を見送った。さらに燃料電池セル評価装置の部材を購入予定であったが、インピーダンス測定を組み合わせた装置を再考し設計中であり購入に至らなかったので、今回は余剰金となった。
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次年度使用額の使用計画 |
26年度に購入しなかったインピーダンス測定を含む燃料電池セル評価装置の組み立てと測定を行うために装置構成材料の購入を行うために、27年度中には26年度の剰余金は使用予定である。また、26年度に試薬購入費が安く抑えられたことを受け、評価する触媒系を拡げ触媒合成を行うことを予定している。
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