室温付近の低温で作動する固体高分子形燃料電池は、家庭用や車載用に応用が始まっている。しかし、低温での電極反応促進のために高活性な触媒が必要であり、電極の高い酸性条件に耐性が必要なこともあって、貴金属の白金が触媒として使用されているために高価格となり、普及が進んでいない。 そこで、低価格で耐久性が高い触媒開発を目的として、低価格材料である遷移金属を活性中心とした金属錯体触媒に着目し、化学的耐久性の点から金属フタロシアニンを取り上げ高活性化を検討した。金属フタロシアニンの中でも、鉄フタロシアニンは白金に匹敵する活性を示すが耐久性に乏しく、コバルトフタロシアニンは耐久性が高いが活性の改善が必要である。そのため種々の遷移金属を中心金属とする金属フタロシアニンの複合化および第2成分分子との複合化を行い、反応機構を変化させて、触媒特性の改善を行った。 触媒の複合化の手法としては、独自に開発した親疎水二液界面析出法を用いた。本手法は通常真空系を用いて得られる金属フタロシアニン分子の積層体を単分子分散した疎水性溶液から得られることを見出していたが、本研究の成果として、条件を制御することで親水性溶液中のイオンや成分との複合積層体が得られることを見出した。2成分フタロシアニン複合系触媒、及びドナーであるフタロシアニンとアクセプター分子の分離積層体を触媒粉末として得られたので、強酸条件ちゅうでの酸素還元触媒特性を評価した。 鉄とコバルトの複合化触媒は、コバルトより高い反応電子数を示し、鉄で見られていた失活が見られなくなった。他にも複合化の効果は触媒が微粉体として得られる効果もあった。また、コバルトのヨウ素イオンとの分離積層体で、高い活性の向上が見られた。電荷移動速度の向上と酸素吸着状態の変化が関与しているとインピーダンス分析、分光分析の結果から考察した。
|