研究実績の概要 |
現行のリチウム電池は、電解質に可燃性の有機溶媒を含んでいるため安全性に問題がある。今後、電気自動車やスマートグリッドへの応用を考えた場合、電池の大型化が必要となり、電池の安全性はますます重要となる。電解質に不燃性のセラミックス電解質を使用した全固体リチウム電池は、構成成分に可燃性物質を含まない為、究極に安全な電池といえる。全固体電池にも現行のリチウム電池の電極材料を使用することができるので、セラミックス固体電解質の開発が全固体電池開発のキーポイントとなる。 本研究では、数ある固体電解質候補の中で最も注目されているLi7La3Zr2O12(LLZ)に注目した。LLZは、焼結体を得るための焼成温度が1230度と高く副反応が生じやすいことが問題となっている。そこで本研究では、セラミックスを低温で調製することのできるゾル-ゲル法を利用して、LLZ固体電解質の調製を試みた。 これまでの研究で、LLZ生成温度は使用するLi塩、La塩によって大きく異なることが明らかとなっており、酢酸塩よりも硝酸塩を使用した方が、低温でLLZが生成し、焼成温度を1100度まで下げることが可能であることが報告されている。本年度は、まだ検討していないZr塩がLLZ生成温度に与える影響について検討した。 Zr塩として、これまで使用してきたZr(C4H9O)4に代わり、水溶性のZrO(NO3)2を使用してLLZ固体電解質の調製を行なった。その結果、ZrO(NO3)2を使用した場合でもLLZの生成が確認され,使用するZr塩にかかわらず、LLZを作成できることがわかった。また、焼成温度は1100度とZr塩に影響を受けないことが明らかとなった。 今後は、焼結材の使用による焼成温度の更なる低下、元素置換によるリチウムイオン伝導率の向上を試みる予定である。
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