研究課題/領域番号 |
26410210
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研究機関 | 新居浜工業高等専門学校 |
研究代表者 |
矢野 潤 新居浜工業高等専門学校, 数理科, 教授 (10200552)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 光ガルバニ電池 / NADH / フラビン類 / 可視光照射 / 電子メディエータ / バイオ燃料電池 |
研究実績の概要 |
色素を修飾した半導体電極(光アノード)と対抗電極(カソード)を,補酵素であるNADH,エタノールなどの燃料を酸化する酵素,メディエーター,水素イオンを含む電解水溶液中に浸し可視光線を陽極に照射することによって光バイオ燃料電池を構築することを目的として,NADHモデル化合物とフラビン補酵素類の電気化学的挙動を調べた。 ① NADHモデル化合物(1-ベンジル-1,4-ジヒドロニコチンアミド,BNAH)とフラビン補酵素類の電気化学的挙動:動作電極,参照電極,対抗電極からなる3電極系の電気化学セルを用いて,BNAHとフラビン補酵素類の電気化学的挙動をサイクリックボルタモグラムにより調べた。BNAHとフラビン補酵素類の酸化および還元され易さや,それらの電位を把握し,メディエーターとしての機能があるかどうかを予備的に調べた結果,メディエータとして有効なフラビン類はフラビンモノヌクレオチド(FMN),フラビンアデニンヌクレオチド(FAD),リボフラビン(FR)であることが分った。 ② 光ガルバニ電池としての作動:FMN,FAD,RFをBNAHを含む電解質溶液に加えた後に、可視光線を電解質溶液全体に照射した。その結果光電流が観測され、光ガルバニ電池として機能することが分った。最大の光電流を与えるフラビン酵素はFMNであることを見出した。またFMNの添加量、溶存酸素の影響、アノード材料の影響などを検討し、光電流に与える影響も明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NADHのモデル化合物の選別とフラビン類の選別に予想以上の時間を要したため、計画の予定よりも若干時間を要した。また半導体電極や色素増感の技術を用いなくても、溶液中のフラビン類に光照射することにより光ガルバニ電池として作動するという期待以上の成果が得られたために、その結果を再確認することなどにより予定以上の時間を要することとなった。しかしながら、半導体電極や色素増感の技術を用いなくても光ガルバニ電池が構築できたという期待以上の成果も得られた。
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今後の研究の推進方策 |
溶液中のフラビン類に光照射することにより、フラビン類とNADHモデル化合物とのメディエーションが著しく促進されることを見出した。その結果、高価な半導体電極や色素増感の技術を用いなくても安価な炭素電極を用いても光ガルバニ電池を構築することに成功した。このことは当初予想していたよりもより効率が良く、かつ安価な電極を用いても光ガルバニ電池が構築できたことを意味する。したがって、当初予定していたより有効な色素半導体電極を作製する必要がなくなった。高価な半導体電極や色素増感の技術をまったく用いず、しかも光バイオ燃料電池として機能することが確実となったので、より多くの光電流(出力)が得られる条件を検討する方向で研究を進めていきたい。
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