研究課題/領域番号 |
26410212
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
木島 正志 筑波大学, 数理物質系, 教授 (70177822)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 有機ナノ構造体 / 炭素化 / ナノ構造化炭素 / 多孔性炭素 / ミクロポーラスポリマー / 木質炭素 / シクロデキストリン |
研究実績の概要 |
炭素化原料となる出発原料のナノ~ミクロン形状有機原料の調製とその形状維持炭素化、ならび炭素化物の基礎評価を行うことを目的に以下の研究を行った。 (A)木質起源物質としてセルロース類を用いて炭素化時の収率向上と微細構造体の成形性向上を目的に、芳香族誘導体の添加効果を検討した。リグニン関連モデル物質であるバニリンやヒドロキシベンズアルデヒドなどを添加剤として用い、TG / DTA解析を中心に炭素化収率向上に寄与する添加剤を検討した。添加剤効果は、焼成炭素化だけでなく水熱炭素化においても検討した。 (B)ミクロポーラス共役ポリマー、共有結合性有機構造体(COF)などの芳香族ユニットから構成された多孔性ポリマーの合成を検討した。共役系高分子としてビナフチル骨格を直接結合、間に三重結合を挟んで結合したポリマーを合成したがミクロポーラスにはならず、炭素化時にのみミクロ孔性となった。また比表面積が3000 m2/g以上のポリ(テトラフェニルメタン)(Benら、Angew. Chem. Int. Ed. 2009, 48, 9457)を有機ナノ構造体として炭素化原料に用いる研究も行った。種々の条件でポリフェニルメタンを炭素化して表面積の大きな多孔性炭素を作ろうとしたが1200m2/g程度以上には至らなかった。さらにポリテトラフェニルメタンにトリアジン構造を導入したポーラスポリマーを合成し、その炭素化を行い含窒素ポーラス炭素の調製を検討した。他に含窒素炭素を設計合成するため、メラミンと芳香族アルデヒドを縮合重合させたポリマー合成とその炭素化物の物性検討を行った。 (C)ナノ~ミクロキューブ形状のシクロデキストリン構造集積体を調製し、表面架橋処理を施し形状維持炭素化を種々検討した。炭素化物はミクロ孔性炭素になった。また、炭素化物をTEMを用いて観察を行た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
木質系物質からは200~250℃の条件での水熱炭化による均一微粒子化の検討を進めており、原料の選択、添加剤効果を含め、現在基礎データを集めている段階である。一方予備的に開始した水熱炭化物の形状維持炭素化は問題なく進行し、900°Cの炭素化でミクロ孔が形成されることを確認するなど、基礎データの蓄積を行っており、階層的多孔構造やヘテロ原子含有炭素をえるための有用な材料となると判断できた。順調な研究進行状況と判断する。また新しい炭素化用バイオマス原料の候補も見つかり新たな展開が期待できる。 炭素化に適した共役系ミクロポーラスポリマー原料の新規合成には成功していない。再度分子設計を行い有効なナノ空間を持つポリマー材料の開発を検討する。その一方、炭素化原料候補の有機ナノ構造体であるポリテトラフェニルメタンCOFは、誘導体も含めある程度調製でき、構造維持・反映炭素化の検討を開始している。 シクロデキストリンマイクロキューブの調製と架橋反応等による誘導体化による形状固定・強化は順調に研究が進行している。シクロデキストリンミクロキューブの形状維持炭素化は適した表面架橋により有効に働き、炭素化条件を選択することによりミクロ孔性炭素化物が形成されるなど、炭素化物の解析も順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の研究方針であった、「1)木質系物質、糖、有機ネットワーク物質、共役系高分子から微粒子、微結晶、棒・繊維、薄膜等の形状を有し、かつナノ構造を有する有機構造体を構築(合成)し、各物質に適した種々の条件で炭素化を行い、形状維持炭素化条件を検討し、実現する。(2)ナノ構造が明確な炭素化原料のナノ構造維持炭素化のための方法、炭素化条件を検討し、原料ナノ構造が維持・反映された炭素化物を合成し、そのナノ構造を評価する。」は、基本的なことであり原則として継続維持して検討する。 木質系物質は、炭素化収率促進と微細形状化、形状維持炭素化を原案通りに推進する。新たなバイオマス資源として、木質系物質の他、藻類も候補として加え検討を行う。また平成27年度の方針案として提示していた、シクロデキストリンマイクロキューブの調製条件の検討とナノ構造を維持・反映した炭素を調製するための外側からの形状補強と内部構造の補強は、すでに着手しているが予定通り推進する。炭素化用途の新規なミクロポーラスポリマーとCOFの合成開発は、分子設計の再考察を必要とする部分があり、実験結果をフィードバックしながら、有効な材料開発を行う。
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