有機ナノ構造体の炭素変換に関し、①γシクロデキストリンマイクロキューブを原料とした形状維持炭素変換、②ミセル化法を利用したセルロースとリグニン複合ミクロ微粒子の炭素変換、③セルロースの水熱反応を利用した炭素変換に関する研究を行った。 シクロデキストリンマイクロキューブは通常の昇温炭素化では溶融し、無孔性の炭素となるが、原料をヨウ素ドープ処理したり、ジイソシアナート等による表面水酸基との反応を利用し架橋し、1℃毎分の低速昇温を行った場合に、ほぼ原料のミクロキューブ形態を維持した比表面積1000㎡/g程度のミクロ孔性炭素となることが分かった。表面を架橋材の種類により、炭素化時の形状維持されやすさと表面の滑らかさは異なるが、生成炭素のミクロ孔性と比表面積に大きな違いはなかった。 水溶性ヒドロキシエチルセルロースとアルカリリグニンをアルカリ水溶液に溶解し、界面活性剤を加えて適当な有機溶媒と混合することで、複合物の逆ミセルを形成させ、そのミセル液をアセトン中に加え沈殿させることで、ミクロンサイズのセルロース-リグニン複合物微粒子を形成させることができた。この複合物微粒子を900℃で昇温炭素化させることで、アルカリ賦活もおこり、1500~2000 ㎡/gの表面のミクロ孔と粒子間隙に由来するメソ~マクロ孔もつ階層構造炭素材料を調製することに成功した。 セルロース分散水溶液をオートクレーブ中220℃で水熱反応を行うことにより、ミクロンサイズの微粒子水熱炭化物が得られる。これを450℃でリン酸賦活処理、900℃の焼成炭素化処理をおこなうことにより、2000 ㎡/g程度の比表面積を持つミクロ孔とメソ~マクロ孔の階層構造をもつ炭素を得ることができた。 これらの階層構造多孔性炭素は、1M硫酸中、0.1A/gの電流密度で300 F/g前後の電気二重層容量(3電極式)を示すことが確認できた。
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