研究課題
本研究は、従来未利用の赤外光を変換する可視光透過型で透明な色素増感型太陽電池(DSSC)の変換効率の向上と高機能化を目的とする。申請者は、すでに独自に開発した有機色素と無色透明有機レドックス対によって、世界初の無色透明DSSCを開発・発表し、注目された。しかしながら、この可視光透過型で透明なDSSCは、変換効率と耐久性(耐光性、耐熱性)が不十分であるため、当該年度では、TD-DFT(Time-dependent密度関数)計算を用いて、各種置換基を導入した耐熱性、耐光性近赤外光吸収色素の候補骨格を見出した。次にこの計算結果に基づき、いくつかの色素の合成、および、UV-Visスペクトルの測定を実施した。その結果、UV-Visスペクトルにおいて、合成した色素は可視光領域にほとんど吸収ピークを示さず、近赤外領域に吸収ピークを示すことを確認した。さらに、サイクリックボルタンメトリーやTG-DTAを測定し、色素の分子骨格と酸化・還元電位や分解温度との相間関係に関する情報を得ることに成功した。
1: 当初の計画以上に進展している
耐熱性・耐光性に優れた近赤外光吸収色素の候補分子の設計を、TD-DFT計算を用いて実施した。さらに、その結果に基づき、平成27年度に実施予定であった近赤外光吸収色素の合成、並びにUV-Visスペクトル、TG-DTA、およびサイクリックボルタンメトリーの測定も実施した。その結果、色素の分子骨格と酸化・還元電位や分解温度との相間関係に関する情報を得ることに成功した。しかしながら、その吸収波長を1000nm以上に持つ色素の合成には、いたらなかった。
平成26年度の得られた近赤外吸収色素の合成指針に基づき、引き続き、近赤外光領域を幅広く吸収する耐光性色素の合成、吸収・蛍光スペクトルの測定、サイクリックボルタンメトリーの測定、色素の熱安定性(TG-DTA)測定を実施する。また、吸収波長を1000 nmの持つ色素の合成にも取り組む。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 オープンアクセス 1件、 査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件)
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