研究実績の概要 |
第一に、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸/酸塩化物と2,2'-ジメトキシビフェニルとの親電子芳香族アシル置換重合について、種々の酸性媒体を用いて条件最適化を行った。まず、Eaton試薬を用いる直接重縮合法について検討したところ、重合が期待通り進行し、対応する半芳香族ポリケトンを得ることができた。しかし一部不溶化が見られた。次に、酸性媒体をポリリン酸に変更し重合反応を試みたが、重合度は極めて低いものであった。これは、ポリリン酸の高粘性によりかき混ぜ効率が不十分であったためと考えられる。さらに、酸塩化物とルイス酸として塩化アルミニウムやトリフルオロメタンスルホン酸(TfOH)を用いるFriedel-Crafts型重合を検討した。いずれも、Eaton試薬を用いた時よりも明らかに分子量の低下が見られた。これは、重合度が上昇するにつれて、ポリマーの反応溶媒への溶解性が低下するためである。以上の結果から、本反応系においては、最初に検討したEaton試薬を用いる重合が最適であることが分かった。なお、ポリケトンの一部不溶化については、2,2'-ジメトキシビフェニルの側鎖をメチル基からプロピル基に変更することで改善することができた。 第二に、上記重合最適化条件であるEaton試薬を用いる重合に用いる、新規アシル受容モノマーの合成ルート開拓を行った。その結果、芳香族ジブロミドと2当量の2-メトキシフェニルホウ酸との鈴木-宮浦カップリング反応により、芳香族化合物の両端に、2-アニシル基を導入した新規モノマーを得ることができた。このアシル受容モノマーを用いて1,4-シクロヘキサンジカルボン酸との直接重縮合を試みたところ、アニス基の5,5'-位で位置選択的に重合が進行し、対応する高分子量体の半芳香族ポリケトンを得ることができた。
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