研究課題/領域番号 |
26410219
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
佐野 正人 山形大学, 理工学研究科, 教授 (40344816)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ゲル / 固体界面 / 共焦点ラマン顕微鏡 / 2成分混合液体 |
研究実績の概要 |
混合溶媒系におけるゲル界面の構造研究を開始した。p-キシレンとオクタンニトリルはあらゆる比率で混合する。また、それぞれ単独や混合状態でも12-ヒドロキシステアリン酸(HSA)でゲル化される。これらの1:1混合溶媒のHSAゲルについて、各成分濃度分布を共焦点ラマン顕微鏡によりマッピングした結果、p-キシレンとオクタンニトリルの濃度比はマイカ界面に近づくにつれて距離に比例して増加しているのが観察された。さらに、この不均一性は界面から300ミクロン以上の距離に及んでいた。完全に混合する液体が、ゲル中で分離しているのが観察されたのは初めてである。 なぜ完全混合する2成分液体が固体界面近傍のゲル中では混ざらないのか、というメカニズムの解明を目的に研究を進めている。まず、この現象は単純な混合液体では起こらずゲルネットワークが必要であること、マイカ表面で発現するがテフロン表面では起こらないことが確認された。さらに、マイカ以外でもキシレンが完全濡れを示す表面なら発現することがわかった。キシレンの分布は常に距離に比例して変化するのであるが、その変化率はキシレンのモル比とともに非線形的に増加した。また、室温までの自然冷却速度でこの現象が確認できるが、冷却速度を下げると変化率が減少し、やがて均一分布を与えた。これらは、今回の不均一分布が熱平衡状態でなく、速度論的に凍結された状態であることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
完全混合する2成分液体が固体界面近傍のゲル中では混ざらない場合があり、その距離は300ミクロンと非常に長いことから、ゲルには「界面ゲル層」と呼ぶべきバルクのゲルとは異なる性質を示す層が存在することを見出した。ゲル表面から溶媒が漏れてこなかったり、ゲルの破壊強度を決めているのは、幾何学的な「ゲル表面」ではなく、界面ゲル層である可能性が出てきた。
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今後の研究の推進方策 |
キシレンが濃縮されているのは吸着したからと考えられる。しかしながら、ゲル中の液体拡散は禁止されているわけではないので、吸着状態が数百ミクロンに渡り保持される理由を解明していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ計画通りに使用できた。
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次年度使用額の使用計画 |
消耗品を購入する。
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