研究課題/領域番号 |
26410220
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
戸木田 雅利 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (30301170)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | モノドメイン液晶フィルム / 熱伝導率 / 熱拡散率 / フーリエ変換温度波熱分析法 / 側鎖型液晶生高分子 / 主査型液晶性高分子 / スメクチック液晶 |
研究実績の概要 |
高分子材料の熱伝導率が低いのは,熱を伝えるフォノンが構造欠陥で散乱してしまうからである.高分子で大きな単結晶ができたらその熱伝導率は高くなるのであろうか?単結晶ではないけれども,申請者は大振幅振動ずりで単一モノドメインのスメクチック液晶ガラスを作製している.モノドメインであることはその透明さで一目瞭然である.構造欠陥の無いスメクチック液晶は層法線方向に大きな熱伝導性を示すと期待される.また,薄膜スメクチック液晶は薄膜中で層を基板に平行に配列させる.スメクチック層法線方向に高熱伝導性が発現すれば,高熱伝導性の有機薄膜となる. 大振幅振動ずりで主鎖型高分子スメクチック液晶は層法線をニュートラル方向に向けた垂直配向しかとらなかった.ただし,スメクチックCA液晶では,周波数や温度によって,c-ダイレクターが速度方向および速度勾配方向に向く配向転移を見出した. モノドメイン・スメクチック液晶をフェニルベンゾエイトをメソゲンとし,スペーサー炭素数m,アルコシキ・テール炭素数nのメタクリレート側鎖型液晶PmBEnを磁場配向させることで得た.膜厚300マイクロメートルの膜に磁場を膜法線方向,膜面方向に印加することで,膜厚方向,膜面方向に液晶ダイレクターが向いた透明な液晶ガラスフィルムを得た.このフィルムに対し,フーリエ変換温度波熱分析法で,熱拡散率αを,温度変調DSCで熱容量C_Pを,浮沈法によって密度ρを測定し,熱伝導率λ=α・C_P・ρを決定した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
温度波熱分析法による熱拡散率測定に適した,二種の配向のモノドメイン液晶フィルムは主鎖型高分子では調製できなかった.一方,側鎖型スメクチック液晶では磁場印加によって二種の配向のモノドメイン液晶フィルムを調製し,熱拡散率の異方性,熱拡散率,熱伝導率と,液晶分子の化学構造やスメクチック層構造との相関を見出しつつあり,当初の計画以上の進展を見せているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
ビフェノールとアルキルジカルボン酸からなるPB-nと同様にスメクチック液晶を形成,折りたたみ鎖ラメラがせん断流動によって配向することで分子鎖が速度方向に垂直に配向する主鎖型液晶性高分子にBB-nがある.BB-nの化学構造はエステル結合方位が逆である点を除けばPB-nと類似している.一方,形成するスメクチック液晶種は異なる.PB-nのスメクチック相はメソゲンがスメクチック層内で短距離的な位置の秩序を有するスメクチックI相である.一方,BB-nのスメクチック相は層内でメソゲン位置の秩序のないスメクチックA相である.層内のメソゲンの充填がより液体的になると熱伝導度はどうなるのか? PB-10の高熱伝導性発現機構を解明する重要な手掛かりとなる.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究協力者からの試料提供とキャラクタリゼーション情報提供があった.また,本年度検討の中心となった側鎖型液晶性高分子は別の研究課題で合成したものを用いた.以上から,試料合成およびキャラクタリゼーションに用いる試薬および消耗品および器具の購入が計画より少なかった.
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次年度使用額の使用計画 |
28年度に用いる予定の試料は研究協力者から提供されるものでない.また,側鎖型液晶性高分子の検討も本研究課題で行う予定である.試料合成およびキャラクタリゼーションに用いる試薬および消耗品および器具の購入が必要である.また,成果発表のための旅費が必要である.
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