研究実績の概要 |
我々はポリプロピレンの過冷却融液の伸長結晶化により、新形態の「ナノ配向結晶(Nano-oriented crystals; NOC)」が生成して高性能化することを発見した[Okada, K. et al. Polym. J., 2010 & 2013]。本研究の目的は、代表的な結晶性高分子について1)NOC生成の普遍性、2)NOCの構造と生成のメカニズム、3)NOCの高性能・高機能等を明らかにすることである。伸長結晶化により生成したNOCの構造・形態と耐熱性は光学顕微鏡とX線散乱によって観察した。 当該最終年度は、試料にエンジニヤリングプラスチック(エンプラ)のポリエチレンナフタレート(PEN)とポリアミド66(PA66)、ポリエステルの一種のポリブチレンテレフタレート(PBT)を用いた。成果を以下に記す。i)PENとPBTのNOCの構造・形態と生成メカニズムを明らかにした。ii)PENとPBTのNOCが高耐熱性を示すことがわかった。iii)PA66のNOC生成を確認し、構造・形態と生成メカニズムおよび高耐熱性を示すことを明らかにした。iv)PA66とポリエステルの、NOC生成と構造・形態における一次構造の重要な役割を明らかにした。 補助事業期間全体での研究成果を以下に記す。i)PETやPEN、PBTなどのポリエステル樹脂のNOC生成を確認し、ナノ結晶が三次元的に配列した高秩序度の形態を示すことを示した。ii) PA66およびフッ素系樹脂のNOC生成を確認した。iii)エンプラを含む結晶性高分子における、NOC生成の普遍性が検証できた。iv)一次構造が重要な役割を果たすNOC生成メカニズムを明らかにした。v)NOCは高耐熱性・高強度等の高性能を示した。 今後は、試作機によるNOC成形システムの構築と開発により、スケールアップを行い、企業と協力して実用化を目指す予定である。
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